3 二度目の第二図書室

築島から渡されたメモは、十分間休憩のあいだに美邦にも見せた。


美邦は怪訝な顔をし、これは十年前の新聞に載っていた事故や自殺かなと訊ねた。冬樹は、恐らくはそうだろうと答える。


昼休みとなり、二人は再び職員室を訪れた。


築島の席へと近寄り、冬樹は声をかける。


来てくださいましたかと言い、築島は立ち上がった。


「ここで話すことではないと思います。第二図書室へ行きましょう。」


そうして三人は第二図書室へ向かった。


第二図書室へ着くと、築島は廊下を見回してから慎重に扉を閉めた。その動作は、まるで何者かを警戒しているかのようでもある。


築島は、懐から何かを取り出して二人に渡した。


受け取ってみると、それはとある高名な神社のお守りであった。


「日曜日に、出雲へと行ってきました。藤村君の言うことも一理があるかなと思い、お祓いをしてきたのです。これは、そのときに特別に作ってもらったお守りです。――どうか受け取ってください。」


「ああ――いえ、ありがとうございました。」


冬樹は恐縮した。お祓いをするべきではないかとは言ったが、それは思いつきに等しい言葉だったからだ。当てになるという自信はない。しかし、築島は本当に出雲まで行ってきたのだ。


三人はパイプ椅子に坐った。


やや声を潜めて築島はしゃべりだす。


「メモは見てもらったかと思います。――見たままのとおりです。様々な知人に電話を掛けて調べたのですが――さかのぼることができたのは十三年前の頭屋までした。一年神主だった方は、全員が亡くなられているか、行方が判らなくなっています。十年、十一年前の出来事も調べてみましたが、特に変わった出来事はありませんでした。」


「そう――でしたか。」


平坂神社について調べれば調べるほど、死人ばかり出てくる。しかも、平坂神社について調べ始めてから、冬樹の周りで二人の人物が亡くなった。


「まるで――過去を抹殺したがっているようですね。」


冬樹のその言葉に、築島も同意する。


「ええ。この分では、神祭りの関係者は、恐らくほぼ亡くなられているか、行方が判らなくなっているのではないかと思います。」


第二図書室は、しんとした静寂に包まれる。


これからどのようにして調べてゆくべきでしょうか――と築島は言った。


冬樹はちらりと美邦へ目をやる。とりあえず、ここ何日か考えてきたことを話してみることとした。


「大原さんに対して失礼なことを言ってしまうかもしれないけれど――大原さんが視覚障碍者であることと、平坂神社の宮司の家系に生まれたことは、何か関係があるような気がする。」


美邦は首をかしげる。


「どういうこと?」


「菅野さんから話を聴いたときから気にかかっとったんだが――平坂神社の神様は、目が一つしかないらしい。」


それから冬樹は築島に視線を遣る。


「そうですよね?」


築島はしばし何かを考え、ああそういえば――と言う。


「そのような話を聞いたことがありますね。かなり大昔に――漁師のお爺さんからだったかな? その昔、平坂神社の神様は釣竿が目に当たって、片目の視力を失ってしまったらしいのです。」


「そうなんですか?」


そんなことは菅野も話していなかった。


「ええ。だから平坂神社の境内には、尖ったもの――特に釣竿は持ち込んではならないのだそうです。」


そして築島は、ちらりと美邦に視線を遣り、すぐに気まずそうに逸らした。視線を向けられたほうは、どこか恥ずかしそうな表情をしていた。


「けれどもその話は、そのお爺さんからしか聞いたことがありません。」


「確かに――菅野さんも何も話されていませんでした。」


ひょっとしたら、平坂町でもマイナーな話だったのかもしれない。


そして冬樹は続ける。


「御忌と似たような風習のある地域は、平坂町だけではありません。」


ミカワリバアサンや御狩神事、海難法師など、冬のある日に決して外に出てはならないという風習は日本各地に存在する。そしてその風習のある地では、一つ目の神や妖怪が夜に出歩くという。


「平坂神社の神様は、釣竿が目に刺さって失明されたそうですが――これと似たような伝承も、日本各地に残っています。何々の木の枝が神様の目に刺さったから、その土地では代々その植物を植えてはならない――と。その土地の神様も、やはり隻眼せきがんなんです。」


「神様が隻眼であることには、何か意味があるのですか?」


一つの仮説ではありますが――と冬樹は言う。


「神様というのは、祖先を祀ったものが始まりだとも言われています。つまり、神様が隻眼だという話は、神を祀っていた者が視覚障碍者だったことが変遷したものではないか――とも考えられるわけです。」


ふっと、美邦は顔を上げる。


「では、平坂神社の神様も元々は二つ目だったということ?」


「ああ――まあ、そうかもな。」


そう答えてから、冬樹は再び築島に向き直る。


「十一年前に何が起きたのかは分かりません。けれども、どうやら神様は常世の国へ帰らなかったのです。平坂神社のことを覚えているのは大原さんだけで――そのことによって、僕も神社について調べ始めました。そして大原さんは、十年前には見えていたはずの左眼を失明していたのです。」


ふむ――と再びうなり、築島は考え始める。


「あ、あの――」


おずおすと美邦が口を開いた。


「参考になるかどうかは分からないんですけれども――どうやら最近、変な噂が流行っているらしいんです。」


それから美邦は、千秋や岩井から聞いた「怪物」の噂について説明する。朱い円い目を持つその怪物について、冬樹はこのとき初めて知った。


どういうわけか、かつて子供向けの本で見た宇宙人の挿絵を思い出した――透明な栗型の被り物を頭に装着した、二つのまるい眼を持つ宇宙人を。確か、フラット・ウッズ・モンスターとかといったか。


「もちろん、その『怪物』の噂が、平坂神社の神様と関係があるのかは分かりませんけれども――。私も、あまり詳しく聞いたわけではありませんし。けれども、もしも平坂神社の神様ではなくて、神様を祀っていた人が視覚障碍者であったならば、平仄つじつまが合うかな――とも思うんです。」


そんな噂があったのか――と冬樹は言った。


「俺は小学生の知り合いはおらんし、情報は伝わって来とらんかったけどな。――築島先生は、この件について何かご存知ですか?」


「僕も――あまり詳しくは知りませんね。けれども、何やらそのような噂があることは知っています。B組の教室で、生徒と一緒に給食を摂ったときだったかな? 一部の女子達が、大きな犬のようなものが海辺を徘徊していると仰ってましたよ。」


冬樹が知らないだけで、中学校でもある程度は噂されているようだ。浜通りや海辺を彷徨っているという点も寄神を連想させる。


冬樹の脳裏には、平坂町の浜辺を彷徨うフラット・ウッズ・モンスターの姿があった。民俗学的な見地から言えば、UFOや宇宙人というのも一種の寄神なのである。それらの目撃談・遭遇談は、物理的に異星人と接したというよりも、幽霊や妖怪を見たというような心霊現象に近い。


あと――と言い、美邦はしばし言いよどむ。


「先々週の日曜日――由香が亡くなった日の夜にも、変なことが起きたんです。最初に噂を聞いたのも、ちょうどその夜なんですけれども――。」


「変なこと?」


冬樹は首を傾げる。


そして、自分が見たものについて美邦は語り始めた。


冬樹は驚きを隠せない。由香が亡くなった翌日、美邦が休んでいたのはそのためであったのか。


「そんなことがあったのか――」


「うん。本当は、もう少し早く話してたらよかったんだけど。」


もちろんそれはそうであった――神社のことと何か関係があるのかもしれないのだから。しかし、内容が内容であることと、美邦の内向的な性格を考えれば、難しいことであったのかもしれない。


そうでしたか――と築島はうなづく。


「にわかには信じがたいことですが――気持ちはお察しします。それで、スクールカウンセラーの先生は、何と仰っていましたか?」


「えっと――」


過眠症の症状に近いことや、集合的無意識と関係があるかもしれないことなど、竹下から聴いた話を美邦は反芻する。


それは方便かもしれませんねと築島は言った。


「恐らく、大原さんの見たものは、現代の医学で説明がつくものではないでしょう。集合的無意識について、科学的に証明されていないと竹下さんが言ったのは、そのためだと思います。」


「そう――ですか。」


「藤村君は、これに対してはどう思われますか?」


冬樹はしばし考えてから、巫病ふびょうのようにも思えますと答えた。


「ふびょう――ですか?」


「ええ。シャーマンがシャーマンとしての能力を開花させる際、そういうトランス状態になることがあると聞いたことがあります。僕も、詳しいことは知らないんですけど――」


シャーマニズムには、精神病患者を巫覡シャーマンとして祀り上げる側面もある。


たとえば、精神に異常をきたした者が、神のお告げや予言などを触れ回る。やがてそれを信じたり、合理的に解釈したりする者が現れ、信仰の環が広まってゆく。しかし精神科医が分析すると、やはりそれはただの精神疾患でしかない。


けれども、美邦が精神に異常をきたしているとは思えない。ましてや、美邦が幻視したその時刻、そとおりの状況で由香は亡くなっている。


ひょっとしたら自分の考えは正しいのかもしれないと冬樹は思った。


「平坂神社の神様が隻眼であったことが気にかかる理由は、これだけではありません。霊能者だとかシャーマンだとかと呼ばれている人には、視覚障碍者――特に隻眼の方が多いからなんです。」


美邦は目を瞬かせる。


「そうなんだ。」


「――ああ。例えば、東北地方のイタコなんかがさあだな。イタコとなる資格のある者は視覚障碍者だけなんだ。イタコだけではなくって、木曽麻衣子っていう有名な霊能力者も左眼が見えんかったらしい。実際、木曽麻衣子はシャルル・ボネ症候群だったんでないかって説もある。」


木曽麻衣子さんですか――と築島は言う。


「懐かしいですね。昭和の頃は、心霊現象を扱ったテレビ番組によく出演されていましたが――。ただ――藤村君の言うとおり、いわゆる霊能力者には視覚障碍者――特に片目の見えない方が確かに多いように思います。悪い例ですが、ソウル教事件の赤坂洋光あかさかようこうも左眼が見えなかったと言われています。ご存知ですか――赤坂洋光って?」


「あの――髭をたくさん生やした人ですよね?」


「はい。ソウル教の元信者によれば、赤坂は――人格はともかくとして――超能力とでも呼べるようなものが確かにあったそうです。ただしそれは特別なものではないし、赤坂は悪用することしかできなかったのだそうです。あとは――戦前にクーデター事件の指導者として処刑された志田義吉しだぎきちという思想家もそうですね。志田は右眼が見えなかったわけですが、霊告によって決起将校を指導していたと言われます。」


確かに悪い例ばかりだな――と冬樹は少し不満を持った。


「つまり――僕はこう思うんですよ。視覚障碍者――特に片目に障碍を抱えている人は、霊感を持っている人が一定数いるわけです。古代の平坂町も同じで、神主いはいぬしは視覚障碍者が勤めていたのではないでしょうか? ただし、霊感を持った視覚障碍者がいつでもいるとは限らないので、やがて神主は町民から神意によって決められるようになったのです。これが宮司のほかに、一年神主のいる理由です。」


築島はこれに同意した。


「なるほど――それは一理あるかもしれません。美保神社の一年神主も、元々は神からの託宣を得る役割であった――とも聞いています。」


もちろん、それは冬樹の勝手な妄想かもしれない。


今さらながら、菅野が亡くなったことを悔やんだ。菅野が亡くならなければ、一年神主の役割について何か詳しい話が聴けたかもしれないのだ。


しかし亡くなってしまったものは仕方がない。


以前から考えていたことを冬樹は言うこととする。


「ところで大原さん――例えば、神送りの神事の当屋にならないかって訊かれたら、どう答える?」


当然、美邦は怪訝な表情をする。


「どういうこと?」


「十年前に平坂神社で何が起きたか俺には分からん。けれども、もし平坂神社の神が常世の国へ返されていないなら、どうあれ返す必要がある。ひょっとしたら、そのために大原さんは平坂町へ帰って来たのかもしれない。」


言ってから、失言だったと思った。美邦が平坂町へ帰って来たのは、父親が亡くなったためだからだ。冬樹の勝手な憶測で、そのために帰って来た、などと言うのは軽率であった。


しかし美邦は、不快そうな顔はしていなかった。目を円くしていたものの、その表情には一点の曇りもない。むしろ澄み渡ってさえいる。


「私は全く構わないよ。けれども当屋になる資格がある人は、十五歳以上で未婚の人に限られるんじゃないの? 私、まだ十三歳なのだけど。」


それは冬樹も気に掛かっていた。


「ひょっとしたら、本来は年齢の制限はなかったのかもしれない。元々、一年神主は視覚障碍者から選ばれていたんだ。それが、やがて神意によって選ばれるようになった。けれどもその場合、一年神主に選ばれる資格のある者は多くなってゆく。だから、制限を設けたのかもしれない。」


しかし男性の頭屋は――と築島は問う。


「それは僕が引き受けます。本当は、資格のある者に籤を引かせる必要があるのかもしれません。そうでなければ――大原さんが、何か託宣によって選ぶとか。」


美邦は首を傾げた。


「たくせん――?」


「もしも俺の考えが正しいのであれば、大原さんは神祭りのためのシャーマンだ。つまりは、神様の意思を聞いたり、感じ取ったりする人のこと。例えば、実相寺が亡くなったときに見たもの以外で――何か見なかった?」


美邦は呆気に取られたような表情をした。


そして、つぶやくように言う。


「竹下さんも、全く同じことを言っていたわ。」


「――竹下さんて、スクールカウンセラーの先生?」


「ええ。この町に来てから、何か見なかったかって言われたの。それで、この町に来てから見たものや感じたことをノートにまとめて下さいって言われたの。そうしてゆくうちに、自分でも忘れていたことを思い出すこともあるわ。」


「そのノートは、今は?」


「家にあるわ。それで、カウンセリングを受けるときに学校へ持ってきているの。ただ、書いたことはだいたい覚えているけれど。」


そして美邦は、今までノートに記してきた内容を口にする。平坂町へ来てから、何かが欠けているように感じることや、幻視の数が多くなっていること、夜の闇から何かを感じること、紅い燈台が眼に焼きついているこ、妙な夢を見ることなどを。


「夢――?」


冬樹は思わず訊き返した。


「うん。――よくは思い出せないのだけれども、他人になっているような夢よ。夢の中で、私は小さな女の子だったの。姉がいて――平坂町のどこかに住んでいたみたい。中通りでお神輿が担がれていたり、神社で神楽舞が行なわれていたりしたわ。夢の中のお姉さんも、その神楽を舞っていたのだけれども。――」


「ちょ――ちょっと待て――」


冬樹は思わずうろたえた。


「そりゃ、ひょっとして一年神主の――当屋だったということか?」


美邦は軽く目を開き、え――と言った。


「いや――いつだったか言ったじゃないか。平坂神社の例大祭は秋分の日に行われる神嘗祭で、そのとき平坂神社から神輿の巡幸があって、一年神主は神楽を奉納するって。」


あ――と美邦は声を漏らし、恥ずかしそうな表情をした。やがて、申し訳なさそうな、戸惑ったような表情に変わり、顔を俯ける。


「私――てっきり藤村君からそんな話を聴いていたから、そんな夢を見ていたんだと思ってた。お姉さんがいる夢も――小学生の従妹がいる家に引っ越して、妹みたいな存在ができたからかなと思っていたのだけれども。」


「僕も、それは神嘗祭ではないかと思いますね」と築島は言った。「町民が一年神主による神楽舞を見られたのは、神嘗祭だけでした。」


「そう――ですか。」


美邦はやや消え入るような声で言う。


「それで――スクールカウンセラーの先生は、何て言ってたの?」


「詳しくは分からない――と言っていたわ。竹下さんは、基本的に悩み事を相談してくれているだけだもの。ノートに思いつくことを書いてみてっていうのも、その一環としてやっているだけだから。」


「そうか。」


そして冬樹は頭をかく。


「その夢は一体、どれくらいの割合で見たの?」


えっと――と言い、美邦は考え込む。


「三回か、五回くらいかな? そんな夢を見るようになったのは、ちょうどお父さんが亡くなったあたりくらいからなんだけど――何しろ夢のことだから、詳しくは覚えていないわ。ひょっとしたら――もっと多く見ていたかもしれないけれども。」


「これからも、見るだろうか?」


美邦は怪訝な表情をする。


「そんなことは分からないわよ。これからも同じ夢を見続けるかだなんて。ただ――可能性は高いのではないかとは思うけれども。」


「だったら――寝るときは、枕元にメモ帳でも置いておくべきだよ。もしまた気にかかる夢を見たら、起きてすぐに書き留めとくんだ。大原さんの見た夢は、平坂神社について何かを指し示している可能性がある。」


美邦は、しばらく何事かを考え込んでいたが、やがてうなづいた。


「分かった。――けれどもそれならば、今までに書いたノートも持ってきたほうがいいのではないかしら? ノートそのものは手放せないけれども、コピー室でコピーとか取れないんじゃないかな?」


「事務の人に言えば、コピー室は使えますよ」と築島は言った。「一回に三十円くらいのお金がいるんじゃなかったかな――とは思いますが。」


「じゃあ、印刷のお金は俺が出すから、とりあえずそのノート持って来てもらえないかな――。平坂神社について、ひょっとしたら大原さんの見たものが大きな手がかりとなるのかもしれない。」


「分かったわ。」


しかし、美邦の顔には、やがて不安そうな表情が浮かんだ。


「けれども――実際に神送りを行うとして、それっていつやるの? 少なくとも、一年後ってのは遅すぎるような気がするのだけれども。逆に、今年の冬至っていうのは、あまりにも急すぎるような――。一年神主に選ばれた人は、一年間神楽舞の練習をしていたんでしょう?」


「そうだな――その問題もあったな。」


冬樹は顎に手を当てて考え込んだ。


肝心の儀式のことについて何も分かっていないのだ。神楽舞の内容も分からないのではないか。


それどころか、結局のところ冬樹は素人でしかないのである。プロの神職として祭祀を執り行ったことなど当然ない。


そう思っていたら、築島がこう言った。


「神楽舞でしたら、恐らくはどなたかがビデオに撮っていたと思いますよ? 九月の神嘗祭のときも、同じ神楽が人々の前で演じられていましたから。知人を当たれば、映像を持っている人がいるかもしれません。」


「あ――そうなんですか!」


ただ――と築島は言う。


「もしも藤村君の言うとおり、神送りを行うために大原さんが町へ帰って来られたのならば、特に難しい神楽舞は必要ないかもしれません。一年神主の年齢制限が無効であることと同じです。神楽舞などというものも、はたして古代にはあったのでしょうか?」


確かにそうかもしれない。


現代にそのような儀式があるからといって、古代にもあったとは限らない。神楽舞などは、のちの時代に加えられたものなのかもしれない。


「重要なことは――いかにして神様をあちらへ返すかということです。」


築島はもっともらしいことを言った。


「僕達が神社で神様に祈るとき――頭の中では、難しい祝詞などを唱えているわけではありません。恰好の問題ではないのです。大原さんが何らかの運命によって平坂町へ帰って来られたのならば――むしろそんなものはいらないのかもしれません。」


冬樹は大きくうなづいた。

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