2 慢性腎不全

美邦が物心つく前から、昭は健康な身体ではなかった。腎臓や膵臓など複数の臓器に疾患を抱えており、消化不良や胃痛などをよく起こしていた。美邦にとって、昭の看病は日常的なことであった。


そんななかでも、取り分け悪いのが腎臓だ。


慢性腎不全。


それこそが、昭の罹っている病である。


昭には腎臓が一つしかない。かつて病気のために摘出してしまったという。美邦の知る限り、腎臓に負担をかけさせないような生活を昭は続けてきた。食事も食塩や蛋白質たんぱくしつを制限したものが続いてきたし、美邦も注意を払っていた。しかし、昭の腎機能は下がり続けた。一年ほど前から、仕事に行く以外は横になっている状態が続いていた。


一度低下し始めた腎機能が元に戻ることはない。腎不全の治療目的は、あくまでも末期腎不全となることを遅らせることだ。一か月前に入院した時点で、昭の腎機能は三十パーセント程度しかなかった。


入院してからも、昭の腎機能は低下していった。


昭が助かるための手段は、もはや腎臓移植しかないという。しかしこれには、まず提供者ドナーが見つかるのかという問題があったし、そもそも昭の身体が移植手術に耐えられるのかという問題も存在していた。


そうこうするうちに、昭の腎機能は十五パーセントを下回った。


これはもはや末期腎不全であり、生命に関わる状態だ。そんなことは、医学的知識の乏しい美邦の目にも明らかであった。昭の顔色は、先があまり長くないであろうことを端的に示していた。

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