4 神社を知る者
昼休憩となり、二人は職員室へと向かった。
職員室へと這入り、その奥にある窓辺の席へと近づく。
冬樹が声をかけると、築島は不思議そうな表情をした。
「どうしたんですか、二人とも。」
「先生――その――ちょっと質問があるんですが。」
冬樹は周囲の席へちらりと視線を遣る。狭い職員室の中には、数人の教師が
「ここでは、あまり話しづらいことですか?」
「ええ――まあ、そうです。」
「それでは、場所を変えましょう。」
築島は立ち上がり、二人を連れて職員室から出る。
二階へと上がり、第二図書室へと這入った。
第二図書室は、図書室に収めきれない本を置いておく場所だ。部屋の三面に本棚がある以外は、テーブルとパイプ椅子しかない。殺風景な部屋であり、図書室と違ってひとけはなかった。実際、ここは生徒指導室の代わりとして使われることもある。
二人にパイプ椅子を勧め、築島もまた坐る。
「それで――何でしょうか?」
はい――と冬樹はうなづいた。
「僕はこのあいだ、この町に神社がなかったかって尋ねましたよね? あの――伊吹にあったっていう、平坂神社という神社です。」
築島の眉がぴくりと動く。
「ええ――僕はお役に立てませんでしたが。」
「あのあとは、僕達も調べたんですよ。」
それから冬樹は、市立図書館から郷土誌が届いたことや、菅野の家へ訪れたことなどを簡単に説明した。
「それで、ネットの画像検索サービスを使って調べていたら、平坂神社の境内の画像が出て来たんです。お尋ねしたいのは――そんな画像のうち、境内にあった石碑を写したものについてです。神社の建て直しに寄付した人の名前が書いてあったんですけど――」
冬樹は、懐から写真を取り出して築島へ見せた。当然、ネットから拾ってきたというのは嘘だ。築島は恐る恐るその写真を受け取る。
築島はまじまじと写真を見つめた。やがて小刻みにその手が震え始めた。
「これは――」
「先生の名前が記されてますね。」
冬樹は告げるように言った。
「先生、平坂神社に寄付されたでないんですか?」
築島は眉間にしわを寄せ、何事かを考え始める。
どことなく苦しそうな顔でもあり、血の気が引いたような顔でもある。
やがて、確かに間違いありませんと築島は答えた。
「僕は平坂神社へと寄付をしました。」
このときになって、自分の知る平坂町へ初めて帰って来たような気が美邦にはした。菅野以外で、平坂神社の存在を知る者にようやく出会えたのだ。
しかし、築島の顔は
「変だな――こんなこと、忘れるはずがないんだけれども――。確かに平坂神社は十年前に倒産したが、忘れられるはずがない。おかしいな――まだ健忘症は始まっていないはずなのに――」
「平坂神社のこと、覚えておられるんですか?」
「はい。忘れるはずがありません――はずがないんですよ。平坂神社は町を象徴する神社だった。僕個人も、この街の歴史や文化に興味があったし、宮司さんとも少なからず関わりがありました。」
「それは――大原糺さんとですか?」
「ええ。――」
そして築島は視線を美邦へと向けた。
「大原美邦さんのお母さんは、大原夏美さんというらしいのです。」
「大原さんって、あの大原さんか――」
「母を――知っているんですか?」
築島は軽くうなづく。
「平坂神社の宮司さんには娘さんが一人いらっしゃいまして、その方が大原夏美さんです。十年前にはもう結婚されていて、女の子を一人設けられていましたよ。神社を訪れたとき、小さな女の子を見かけました。恐らくは――大原さんで間違いがないでしょう。」
「そう――ですか。」
築島はやや遠慮するような視線を美邦に向ける。
「その――左眼はどうされたんですか?」
美邦は思わず左眼に手を遣る。
「少なくとも、大原さんが平坂町におられた頃は、視覚障碍は抱えられていなかったように思うのですが。そうでなければ、宮司さんがお話して下さっていたはずです。」
「私がまだ小さなころに――視神経炎で失明してしまったんです。」
そうですか――と言い、築島は視線を背ける。
「とても良く似ていらっしゃいますよ――お母さんに。」
心の底が軽く疼いた。母親のことなど美邦はほとんど覚えていない。写真を見ても、似ているなどとは思ったことがなかった。それでも――他の人からすれば、似ているように見えるのであろうか。
「それで、ここからが肝心なことなんですが――」
冬樹は本題に切り込む。
「少なくとも菅野さんは、御忌の風習も、宮座も十一年前まであったと言うんです。けれど、それは本当のことですか? だとしたら、なぜ誰もが知らないんでしょう?」
築島は額に手を当て、何事かを考え始める。
やがて、確かに間違いはありませんと言った。
「平坂神社が倒産するまでは、御忌の風習も宮座もありました。ましてや、この町の住民で平坂神社の存在を知らない者はいないはずです。」
「では――なぜ?」
「分かりません。僕自身、平坂神社の存在も御忌や宮座の風習も、藤村君から質問されるまで忘れていたのです。」
「忘れていた――?」
「本当です――」
築島はやや余裕のない声で言う。
「僕は、僕自身に起きていることが信じられないくらいです。平坂神社は倒産するような神社じゃなかったし、もしそうなら、町中が大騒ぎになっていたはずですよ。それなのに――平坂神社に関する記憶は、十年ほど前を境にぷっつりと途絶えている。」
「まさか、町中の人が、平坂神社の存在を忘れてるってことですか?」
築島は首を軽く左右に振り、分かりません、と答えた。
「けれども、少なくとも十年ほど前までは誰もが知っていたんですよ。御忌の日には決して外には出なかったし、御忌明けの日には籤も引きに行っていました。それは町中の人がそうなんです。」
どうやら築島は嘘を吐いているわけではなさそうだ。そもそも冬樹でさえ、平坂神社の記述が郷土誌にあることを見落としていたのだ。
美邦はぽつりと口にする。
「神社は――消えてなくなったのではないのですか?」
二人の視線が美邦へと向かった。
「私は――この町に神社があったときのことを覚えています。けれど、私でさえも覚えている神社を、この町の人たちは知らないと言います。まるで煙のように消えて無くなったかのようです。」
しばらくのあいだ、第二図書室は静寂に支配された。
やがて、築島は大きくうなづいた。
「大原さんの言うとおりかもしれません。ここ十年間くらい、平坂神社は『消えて』いました。もっと言えば――いつの間にかなくなっていたのです。神迎えや神送りも、いつの間にか行われなくなっていました。」
しかし、冬樹は信じられなさそうな顔をした。
「そんなことが――起こるというんですか?」
「分かりません。けれども――宮司さんの家が火事になるまでは、確かに平坂神社は存在していたのです。御忌もあって、宮座もあって――そうだな――秋のお祭りもあったし、お正月のお参りも、七五三だって平坂神社で行われていたはずですよ。年中行事に関わることが全て平坂神社で行われていたんです。」
冬樹は軽く目を見開く。
「今は、七五三も初詣も市内の神社ですよね?」
「はい。この町に長く住んでいるものなら、覚えているはずなんです。」
冬樹は肩を落とした。
「そんな神社が――どうして消えてなくなってしまったんでしょう? 築島先生は何か心当たりはありませんか? 例えば――十年か十一年くらい前に、平坂神社で何か変なことが起きたとか。」
築島は眉間にしわを寄せ、しばし考え込んだ。
「少なくとも、僕には心当たりのあることはありませんが――。それこそ、宮司さんが亡くなり、しばらくして火事が起こったことを除けば。」
けれども――と築島は言う。
「思い返してみれば、この町は十年前とは何かが違って感じられます。夜だって、もっと安全に出歩けるものでした。自動車事故なんて何年も起こらなかったし、人が失踪することもそうそうなかった。」
「この町の夜が変になったのも、十年前からですか?」
「ええ――平坂神社がなくなる以前は、この町の夜はあまり危ないものではありませんでした。少なくとも――御忌の日の夜を除いては。」
「御忌の夜は、今の平坂町の夜みたいな感じでは?」
「いや――少し違うんじゃないかなぁ。御忌の日は、外に出てはいけないという緊張感みたいなものがぴりぴりと張り詰めていました。けれども――今の夜は、何だか寂しいですね。まるで真夜中の山道を、一人で歩いているような感じがする。」
「そう――ですか。」
「逆にお尋ねしますが――」
築島は不安そうな眼差しを冬樹に向ける。
「藤村君は、こうなったことについて何か推理を立てていますか?」
冬樹はやや難しそうな顔を見せ、そして踌躇いがちに答える。
「一応、それらしいことは考えていますが――」
「例えば、どのようなことを?」
「いや――もしもこの町から、平坂神社の存在を消すことのできる者がいたとしたら、それは何なんだろうって。ましてや、平坂神社がなくなったときから、この町では不審死や失踪事件が何度も起こっています。夜の雰囲気も変になってしまいました。――そういうことを起こせる存在というのは――平坂神社の神様じゃないかなって思うんです。」
――そうだ。
美邦は、欠けていたピースが一つ埋まったような気持となった。
なるほど――と築島はうなづく。
「僕もそんな気がします。大原さんは、この町には神様がいないような気がする――と仰られましたが、僕は逆のように感じます。むしろ、この町には何か変なものがいるような気がしてならないのです。」
その言葉は、美邦にとって少し不本意に感じられた。
「あの――実は、神様がいるような気が私もするんです。」
「――そうなんですか?」
「はい。なんだか――この町には神様が欠けているけれども、それと同時に、いるような気もするんです。昼間には何だか寂しいような気がするのに、真夜中になると、逆に暗闇が生きているように感じられる。」
「そうですか。」
築島は難しそうな顔を見せる。
「僕が藤村君の考えに賛成する理由は、もう一つあります。それは、平坂神社の神様が、生贄を求める神様だと聞いたことがあるからです。」
冬樹の眉根が、ぴくりと動いた。
「そうだったんですか?」
「はい――。神祭りの夜に外に出た者だけではありません。一年神主に選ばれた者か、あるいはその家族が、生贄として亡くなられたことがあるようでした。実際にそのようなことになったことは、『およそ』ないようでしたがね。けれども、実際に十数年ほど前にも、一年神主となられた方の家族が亡くなられたことがありました。」
築島の目元には、悲し気な色が浮かんでいる。
「それどころか、儀式と全く関係のない者も生贄に取られることがあると聞いたことがあります。――ただし、こちらは、全く偶発的に起きた不慮の死などを、生贄に取られたものと解釈した面が大きかったと思います。」
美邦はふと顔を上げる。
「私の祖父や母も、それが原因で亡くなったのでしょうか?」
「分かりません。ただ、一年神主やその家族に関しては、確かにそのようなこともあったのです。この町で起きている不審死や失踪事件は、それらを連想させます。」
しかもそれに加え、御忌でも実際に人が死んでいる。
冬樹は次のように続ける。
「けれども、平坂神社で火事が起こったのは、十年前の一月のことなんですよね? 冬至の日の神送りから、春分の日の神迎えまで、この町には神様がいなくなるはずなんですけれどもね。」
築島は怪訝そうな表情をした。
「ということは――神様とは関係がないということですか?」
「いえ。ただ――それに関して気にかかることがあるんですけど、十年前の春分の日に神迎えの儀式って行われてましたかね?」
築島は考え込んだ。
「よくは思い出せないんですけれども――宮司さんの家が火事になって以降、平坂神社に関する記憶はぷっつりと途切れていますね。ということは――恐らくは行われてはなかったんじゃないかなあ。いや、詳しく調べてみないことには分かりませんが。」
なるほど――と言い、冬樹は眉根を寄せる。
「けれども、この町には神様がおられるみたいなわけですよ。となると、神迎えの儀式が行われたまま神様が返されていないか、あるいは逆に、神送りの儀式のときに何かが起きて神様を送り返すことができなかった――とも考えられませんか?」
第二図書室は再び静かになった。
廊下から、生徒たちのはしゃぐ声が聞こえてきている。
美邦はぽつりと口を開く。
「私の父は、私を平坂町へ帰したくないようでした。」
それから、引っ越す前のことを少し築島に語って聴かせた。
「――そして平坂町に帰って来たら、平坂神社の存在が消えていました。調べてみると、祖父も母も、立て続けに亡くなっていました。もしもこれが神様の祟りで亡くなったのならば――父は、平坂神社を捨ててこの町から逃げてきたようにも思えるんです。」
二人とも、しばらく黙りこんだ。
やがて、築島はこう言う。
「逃げてきたかどうかはともかくとして、確かに、避難してきたように感じられますね。なぜ大原さんのお父さんが、平坂町や神社の存在を隠していたのかかも不思議です。」
それは美邦も今まで考えてきたことであった。
しかしそれ以上に気にかかることもまたある。
「父がなぜ平坂町のことを隠していたのかは分かりません。けれども――私が帰ってきたあとは、由香が亡くなり、平坂神社について話を聴いた郷土史家の方が亡くなられました。まるで――神社や私に関わった人達が亡くなっていっているみたいに。」
築島は、少し狼狽えたような表情となる。
「それは――さすがに考えすぎではないでしょうか?」
「藤村君の爪が剥がれたことも、警告のように思えるんです。」
「爪――ですか?」
冬樹が、先日のことを説明し始める。
その途中で、右足の下足と靴下を脱いで
築島は眉をひそめ、酷いなこれはと言う。
美邦へと顔を向け、冬樹が口を開く。
「けれども大原さんは、神社について調べるのをやめたくないんだら?」
「うん。」
「それなら、俺は神社について調べたりするのをやめたりしないよ。」
この言葉に、築島も驚いたような顔をしていた。
「それは大丈夫なんですか――藤村君?」
さすがの冬樹の少し困ったような表情を見せる。
「分かりません。けれど、これは放っておいていいと思えないんですよ。」
築島は目を瞬かせた。
「僕の父が自動車事故で亡くなったことはご存知でしょう? あのとき以来、この町の夜闇が、父を連れて行ったのではないか――と、そんな気がしてるんです。その夜闇の正体が何であったのか、もう少しで分かるような気がしてるんです。」
「ふむ――」
「それどころか――なぜ実相寺は亡くならなければならなかったんでしょうか。神社とも神祭りとも、何も関係がなかったのに。」
「その気持ちは、僕もよく分かりますよ。」
寂しげな声で築島は言う。
「僕は、人生のほとんどをこの町で過ごしてきました。この学校に勤めてからも随分と長くなります。本来ならば亡くなられる年齢ではないはずの方が、不遇の事故に巻き込まれたり、失踪してしまわれたりするのを見るのは、本当に辛いものがあるのですよ。」
由香のことを言っているのだろうか。
いや、由香だけではないのだろう。恐らく、築島のよく知っていた人物というのは、この学校の生徒のことなのだ。そこまで考えたとき、美邦は、築島が自分や冬樹の身を案じているのだと気づいた。
「この町は、元々はといえば、漁業以外に何の取り得もない、貧しい漁村でした。その漁業でさえ、近代化されるまでは、命懸けのものだったのですよ。日本海の流れは激しく、板子一枚下は地獄でした。――そうであるからこそ、多少の危険はあっても、神様を常世の国から呼び寄せる必要があったのではないかと思います。けれども――それが今はどうでしょう? 漁業はおろか、それ以外の産業も発展してきて、わざわざ危険な漁をする必要など、どこにもないのです。神社がなくなり、神祭りが行われなくなった今でも、平坂町は何の不自由もなく生活を行えています。」
築島はどこか遠い目をし、軽く溜め息を吐いた。
「よろしければ、僕も調べてきましょうか? 平坂神社のことや、十年、十一年前に何か変わったことがなかったか――ということを。」
冬樹の顔が、少し明るくなった。
「いいんですか?」
「僕も、このことに関しては興味があるので。知人に手あたり次第電話をしていけば、何かしらのことが判るのではないかと思います。できれば、一年神主の経験者の方を探したいですね。神祭りのことについて、何か聴けるのかもしれない。」
そうはいうものの、美邦は不安を拭えなかった。
「けれど――築島先生の身も危なくなるのではないでしょうか?」
「それを言い出したら、貴方達も同じですよ。」
築島は、冬樹のほうへと向き直る。
「藤村君――君は民俗学に詳しいようですが、何か、魔除けとかそういう方法はご存知ではないのですか? 身が危うくなるかもしれない以上は、何か対策を立てるべきだと思うのですが。」
冬樹は、ふっと考え込んだ。
「この町の民家に吊るされている紅い布は、御忌の日に神様の災いから身を守るためのものだったのではないか――と思います。地方によっては、海桐や熊手・刃物などを軒先に掛けて、魔除けにするようですが――。ただし、どれだけ効果があるのかは分かりません。僕の家にも、紅い布は吊るされていたはずですし――」
菅野の家に吊るされていた無数の紅い布のことを美邦は思い出していた。ひょっとしたら菅野も、冬樹と同じことを考えていたのかもしれない。しかし菅野は、どれだけ戸締りをしても壁を通り抜けて「泥棒」が這入ってくるとは言っていなかったか。
「あるいは、塩や米、御神酒などで作られた結界などが思いつきますが――それらにどれだけ効果があるのか、研究した人はいないでしょうね。」
「まあ――そうですよね。」
「そうでなければ、名のある神社からお守りをもらったり、お祓いをしてもらったりしてご加護をもらうという方法もあるとは思いますが――。そのへんのことについては、ちょっと急には思いつくことができないので、調べてきてもいいですか?」
「もちろん、構いませんよ。けれども――他の神社のご加護をもらうのは、悪くない方法ではないかなとも思いますけれどね。」
右耳の奥に、じわっとした痛みを感じたのはそのときだ。
美邦は思わず右耳を押さえ、前かがみとなる。
唐突な行動に、冬樹は心配そうに声をかけた。
「どうかした?」
「いや――ちょっと耳鳴りが。」
美邦は何げなく、図書室の外へと目を遣る。そして、ドアに嵌められた硝子の外に、何者かの動く姿が写った。同時に、紙の擦れるような音もする。
そのことが気に掛かったのは、美邦だけではなかったらしい。振り向けば、冬樹も築島もドアの向こうへと顔を向けていた。美邦と顔を合わせ、怪訝そうな表情をする。
築島はゆっくりと立ち上がり、ドアへと近寄った。美邦や冬樹もまたそれに続く。築島はドアを開け、廊下を見回す。廊下には生徒達が少しいたものの、第二図書室を覗いたような者はいなかった。
「何だったのだろうな――今のは。」
その言葉のあとには、厭な感触だったなという言葉でも続きそうだった。
「まあ、いずれにしろ――」
扉を閉め、築島は言う。
「十年、十一年前に何があったかはともかくとして、もしも本当に神様が返せていないのであれば、やることは一つのようですね。」
冬樹は首を傾げる。
「と――言いますと?」
「決まっています。――再び、神送りを行うのです。」
その言葉は、美邦の中で深く響いた。
この町へ来てから感じていた違和感がなくなったような、妙に腑に落ちた感覚がしたのだ。それがなぜなのか、今の美邦には分からなかったが。
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