十一の節 神獸族・絽候。 その二
「知った風な口を叩くな」
照れ隠しか、本当に不快を表しているのか。
「判るよ。同じだもん。ボクとアンタ」
「会ったばかりで、これ以上
若干、殺意が込められる青い月の色を受けてさえ、
「暴力まで振るうのかよ。この八聖サマは
「
「
低く、説得力のある渋い声が
現れたのは、
「はぁ? どこに問題があるんだよ」
「先月と同様。だけでは駄目です」
「ウッソだろ、お前。どうせ誰も見てねぇだろうによ」
指摘するウンケイに言われ、
残された
普通なら、気配を察して飛び立ってしまう。この草庵一帯に存在する者の気配が、常人離れしていると言えた。
「主の非礼、平に御容赦戴けると幸いです」
メイケイは、綺麗な一礼を
「ここは粗末な草庵でございます故、御満足戴けるお持てなしが出来ません。重ねて、御容赦下さいますように」
メイケイの態度は、折り目も正しく丁重だが、帰れ。と暴言に等しい内容だった。
「ここは、大変危険な場所です。
「追い払うためのお題目なんて、ボクらの間には必要ないでしょう? メイケイ先輩」
無邪気な笑顔のまま、
「では、単刀直入で申し上げる。主に関わらないで戴きたい」
種族も、立場も、遥か雲の上の相手に、メイケイは毅然と言い切った。証拠に、
「メイケイ先輩。そんな訳には行かないよ」
淡い金色の
「ボクは、もう決めちゃった。
再び、
メイケイの黒い鼻が、
「
メイケイの種族特性である嗅覚の鋭さ。相手の分泌物に含まれる感情物質によって、ある程度の判別が可能だった。
例えば、相手の言葉が真実なのか。緊張や不快感から発せられる、種族別の正確な物質と量。酸性濃度の高さすら、メイケイ達は記憶していた。
「そんな事に気を
少し慌てた動きで
「ボク達、
メイケイは観念したのか、肩を落として息を吐いた。メイケイの懸念は、まさにそれだと言わんばかりに。
「
「どの道、結果は決まっているんだ。結果に向かって、ボクには幾つかの選択肢がある」
食器しか持った事がないような指を、
「最悪に連なる結果になるのか、最善に連なる結果になるのか。これは、もう受け取る側の都合だけれどね」
突然の預言者のような発言にも、メイケイに反応もなければ無感動だった。これも、日頃の賜物という名の悪癖と言える。
さらには、言った
「どれを選んだとしても、ボクは
「それはどうも。
常識とは、かくも重要なのだと知らしめるやり取りが、収まる所に落ち着いた。何より幸運だったのは、互いの利益と不利益が共有出来た事だった。
「ここ、善い所だね。って、地上は色があって素敵な場所だから全部好きだけど」
周囲を見渡す
やがて、
【 次回・第二章 選択する世界 】
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