三の節 運命の双刃・運命の双璧。 その二
「ほ、報告では、
今回が初陣の法士が、動揺のあまり声を荒げてしまう。
「
これは、
歴戦の法士や、手練の
そこで、
「崩れた風の
討伐の成否を、伝えるためにも〝
彼が言う〝
基本性能は、統一規格が設けられている。
「相当な
黒の群狼は、再びバローツへ向き直った。
「そんな事を言われては、我々が来た意味がなくなる。我々は、このケダモノを屠るために
「その通り。我々のような肩書き持ちが動けば、必ずそれぞれの本営に報告が行きます。
「シザーレ側は苛烈だと聞く。巣から抜けると、死と黒の円環まで追われ
「確かに、それは事実ですが最近、気になる噂を耳にします。大小の人影。二つの大きな人影。こちらの仕事も取られて、難儀しております。つい先日の一件で、面白い情報が集まりました」
初夏の温い風が吹く。
「我々は運良く、二種類の死骸を検分する事が出来ました。一つは、このように致命傷のみの死骸。もう一つは、
「要するに、双方は別行動・別目的でケダモノを屠っていると?」
「その通りです」
「内容の先が見えんな。何が言いたい」
バローツが何かの音を立てた。顔全体を覆う白い
「先程〝
バローツの言葉を受け、黒装束は意味ありげな笑みを口元に浮かべる。二つ、間を置いて黒装束は荒れた唇に言葉を乗せた。
「それは、
「
両者は押し黙り
饒舌だった黒装束は、黒い頭巾を軽く
彼らの姿を、漫然と白い集団が視線で追う。やがて、それぞれの視界から消えた。
「不気味な連中だと思っていたが、割りと整然と
「うむ。最後に礼もなく立ち去るのは、残念だったが」
白い法士団の一角で、小声の感想会が起きた。
「それにしても、あの連中の移動手段が気になるな」
「最高機密だと言う話しだ。シザーレ内でも、上層部と
憶測の
「下らぬ
硬質な声が指示となって渡る。声の主はヒト型に近いが、細かい鱗の肌に、印象的な緑色の瞳。若々しく張りがある
名を、レン・デン。バローツに仕えて久しい、ニンゲン属リュウ種エオグレーン族の上級法士が、適切な音量と距離感、立場に見合った姿勢で一団を指揮する。
「ケンエイ様、背の高い方の
作業も
「撤収の合図を伝えよ」
「特徴のあるあの声は、ユタカ坊ちゃんです。それに、無言で控えていた方は恐らく、マサメ坊ちゃんに違いありません」
公私共に世話になる、反応がない
「ケンエイ様。本当に
デンは遮られても構わず、主の意識を引くため言葉を繋いだ。
「私に何の相談もなく、
「も、申し訳ございません」
憮然と会話を切り毅然と、炎を具現化したような愛竜に向かうバローツだった。しかし、急に歩みを止め顔面をも覆う
「ふんっ。今年は夏の訪れが早いな。汗が止まらんわ」
バローツは、腰の革袋から手拭いを引き抜いた。言葉に出した事象を、シミや
堂々とした、後ろ姿からも目立つある物が両方の
それは、
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