三十九の節 洋々たる、ダンターシュ。 その一
スーヤ大陸東端には、かつて
その圏内の南東部。デルカ湾には最大の海洋交易の規模を誇る港湾都市・ダンターシュが深い歴史を刻んでいた。
ダンターシュの中央にある噴水公園は、目の前を海にしながら豊富な真水を誇示する演出も兼ねている。
もう一つ、象徴がある。白い
これは、西端の港湾都市サン・バステアンの対と成す、食の夜明けを示している。彼らの旅は、ここから始まったのだ。
また、この噴水公園周辺は、毎月のように催し物が用意され、多種多様の観光客や交易商人達で日々賑わいを見せていた。
石灰岩質を特徴とする海岸線は多い。ダンターシュの一角もそれに
だが、最大の収益源は海洋交易によるものだ。
陽も高い時間。昼食時間とあって、方々からの飲食の誘惑。
生鮮食品に寄る害虫が、硫黄を嫌う性質を知った先人達の知恵でもあった。上下水道の他に、地下通風口が整備され硫黄泉が
そんな中、ダンターシュの宿場街・タイレー区は、奇妙な
人種も交易品の数々で
ほぼ同じ背丈の長身は、おおよそ
前者は、シザーレ
解散し、あるいは崩壊した、スーヤ大陸有数の二大都市を
そんな二名は、海浜公園の一角。段丘状の座席に待たせていた連れに向かう。
その先には、
快晴の空の下。走る円環。光源も相まった彼は、
「何て、お美しいのかしら」
「
「しっかりした衣装の随伴者がいるわ。きっと、徳の高いお方かもしれませんわね」
通り掛かる、身なりも良い貴婦人達が、絹の扇子で口元を覆い噂する。
不思議な青に染まる瞳。下がる目尻を余計に垂らし、彼は幸せ顔で餌を撒いていた。
頭や肩、膝にも白い塊を宿らせ、
「
黒装束の長身、アラームが声を掛けた次の瞬間。海雀が
「おい、アラーム。俺の癒やしを返せ。今すぐ返せこの野郎!」
すり鉢状の一帯は、野外舞台にも利用される。音響効果も相乗し、
「
「あぁん!?」
「狭量な事を言うな。
「お前さんは分かってねぇよ。コイツ、角も
「判っていないのは、そちらの方だ。開発してやれよ。
「何だよそれ、
「
「ウッソだろ! お前!」
時間帯も手伝い青空の
「良い加減にしろよ! そもそも、猫ちゃんが見えないのは、お前さんのせいだろう! 港街と猫ちゃんは、あって当然の
不衛生で、伝染病も媒介するとされるが、一番の懸念材料は商品を
伝染病は、身近な生物。あるいは
「迷惑と言うのなら、今の
一気に言い切ったアラームに呑まれたらしく、今度は
するとアラームが、背後の小物入れへと手を回した。その様子を見ている彼らは思い知っている。アラームの背後が、一番危険だと言う事を。
ここ、ダンターシュに着くまで、数々の襲撃に
『私の背後は、最も安全な場所だ。危険を察したら、いつでもおいで』
アラームは前半身を相手の血や臓物を浴びていたが、その背には一筋の穢れもなく、凄艶な笑みを口元に浮かべながら告げたものだった。
「ほら。これで薔薇でも買って来い」
平静なアラームの声に、近い過去を思い起こしていた面々は現実に引き戻されたらしい。
その言い回しに込められた意味を、探り当てようとしていた。
そんなアラームの白手袋に包まれた手には、
先程の薔薇とは、娼館でも一~二人しかいない、最高級の娼婦が持つ称号を差す。
序列が高い順から低い順へ、
「ウッソだろ、お前。何でこんなモン持ってるんだ」
どうやら
「マリサに
「へ~ぇ」
素直な感嘆を漏らした
「少々の事で
顔半分も見えないが、少なくともアラームの端整な口元には、大真面目な色が添えられている。
「冷やかしてんじゃねぇぞ!」
「そっちは娼館の方向ではないぞ」
「
威勢良く
「メイケイ、ウンケイ。悪いが、ジャレック区まで
「承知しました。後程、
兄・メイケイが、小さな身体に緊張を走らせつつ低頭しながら応えた。弟のウンケイも
「
「ボクは、先輩達に着いて行きます。街の様子を見たいのです」
元より、
それは、スーヤ大陸の海運と陸運を支える守護者・グランツ企業連合。現在は、ダンターシュ
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