二十四の節 根無し草の行方。 その一
シザーレ
月明かりは、数時間前に起きた人畜乱戦によって生成された、
スーヤ大陸最大の街道・
フィーツ・ワイテ帝国、
そんな人波から随分と離れた場所に、天然の明度に照らされている生者達の影が立つ。
「ア、アラーム様」
「正気か?」
「はい、何とか」
「少々、
殺戒を解き、そこそこ暴れた
「この姿では、初めましてになるのかな。アラーム・ラーア。少し前までは、パシエと名乗っていた者だ」
「ちょっと待ってくれ。今夜は珍種の展覧会かよ。もう、頭が追い着かねぇよ」
戦闘で
「シクンの親戚か? この際、そんな野暮な問い掛けはしない。しないが、これだけは確認させろ。今年の交換会で、デカい白い犬を連れて帝国に来た騎士・パシエ。って事かい?」
「その通りだ。例の白い犬も、そこに来ている」
アラームの声に応え、土の地面を掻きながら気配が近寄る。豊かな新雪色の背の被毛に、別の毛色が見え隠れする。
「メイケイ! ウンケイ! 無事だったのか」
言い終えないうちに、
「無論だ。裂かれた着衣も修繕し着せてある」
「色々、気に食わない所はあるが、その、有難うよ」
新雪色の被毛に包まれる二人には怪我も見受けられず、血の匂いもない。穏やかな呼吸が、その小さな身体を緩やかに上下させていた。
「名乗れる肩書きは、爆発して消えたようなモンだが、
力ない抜けた表情の中に、安堵が垣間見える顔を上げた
受けたアラームは、近くにいる
「
「
「我々も、それに
「好きにしろ」
相手にするのも、もう面倒と言わんばかりに
「なぁ、おい」
少し間を置き、
「名前、何て言うんだ? その、白い狼」
「狼と決め付けてしまうのか。別に、どうでも善いけれど。
「さ、触っても構わないか?」
崩れそうな身体を支え、
十人中、十人が不気味さを覚える
濃い金色の
ついでに、アラームが
「お断わり。だってさ」
「ウッソだろ! お前!」
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