二十三の節 問われる生命。 その三
今度は
「ちょっと待て。シクンって、あのシクンか?」
切迫する場面が緊急停止した。幸い、言い放つ本人が施した
「ウッソだろ、お前。シザーレ
小柄な黒装束姿の少年が、自尊心を踏みにじられた不快感を
「相も変わらず
「そんな事を、いまさら言われてもなぁ」
「結局、お前さんの背丈は、十年前に何かの式典で会った時のまんまだな。全然伸びてねぇし」
余裕で六フース(約
言葉と
「まだ言うか! 無礼な奴だな本当に! 今、その垂れた
本来の目的とやらを、見失いそうになっているシクンの小さな身体を、白い袖が背後から優しく包み込む。
「いけませんよ、シクン。今は自重して持ち場に戻り、役割を果たして下さい」
流れを引き戻すため、
「そのデカいの一応、野郎なんだろう? お前さん達、デキてんの?」
「何とでも言うが良い。僕達の
シクンは相手の挑発を無視し、酷薄な表情と口調に返った。やがて、
「貴方も、もうお止めなさい。私にとっては
「
終えると、上体を起こしたまま片膝を着き、再び三度の礼を
急に始まった
赤い貫頭衣、四分割される裾から覗く尻尾。それらが白銀色に変化し、周囲の
「ようやく、
今度こそ
◇◆◇
閃光弾に照らされた開けた地面には、生命活動を休止させられた残骸が散乱する。虐殺の死臭が立ち込める中、大小の影が間を置いて
小さい方の影。シクンの足元には、
「僕を止めないんですか?」
大きい方の影。元の色が隠れる程、
「止められるような事をしている自覚があるなら、シェス・シェリムング・セリンディアスを置いて行け」
「僕は、後世の歴史家に
影は、大きさのままの態度と対応で会話を成立させていた。
「貴方の事は、
せめて場を乱す事がないようにと、我慢をしていたのか。シクンが、
「これは失敬。生まれも育ちも上流階級のシクンの前に立つ姿ではなかったな」
六度目の閃光弾が打ち上がり、辺りは昼間にも劣らない明度に変わる。シクンと十歩程度の距離を置き立つ相手が、元々は緑色の制服だった悪臭の源である着衣を、一気に剥ぎ取った。
「これで、匂いの元は断てたはずだ」
閃光弾に照らされた相手は、今は解散したシザーレ
「最後の群狼の、つもりなのですか」
かつては
「シクンは感傷屋なんだな。私は気に入ったから、知己に作って
シクンとは違い、今も目深に
「は、話しを戻します!」
元は、シクンの失態で流れが反れた事を思い出したのか、
「そちらは、やりたいように動いてくれ。
整い過ぎる口元から、表情が消える。見る者に、永劫の停止をもたらす禁忌の風景のようだった。
「どうせ、私に壊されて終わるのだから」
シクンよりも物騒な言葉を吐いた長身の持ち主は、再び口角を上げた。
「担げるのか? 手伝ってやるよ」
「出来ます!
「勘繰るな。親切心だよ」
「その一言が、相手を
人工の照明に劣る事のない、鮮烈な容貌がシクンの背後に現れた。シクンの全てを支えるための存在意義を主張する一端として、長身の黒装束は名を差した。
「
「
「シクン達も大変だな。我々の都合に
アラームに水を向けられ、シクンは
「貴方は、そうやっていつでも自らを
「今はね」
アラームの言葉を無言で受けた
金色の生きた昼間は、次の瞬間には音も振動の一つも起こさずに消えた。
アラームは、静かに息を一つ吐く。先程まであった、ケダモノに
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