十七の節 シザーレ眞導都市、陥落。
季節は晩夏、
「なあ、ふくらすずめって知ってる?」
平日の夕暮れを控え、まだ明るさを残す午後。主屋の脇にある、小さな庭と草庵で少年の声と気配が立つ。
「冬場、寒さのために全身の羽毛をムクムクにさせた
その相手が、異形の少年・
それまでは、
「今の
「止せよ、照れるだろうが」
「いい歳して何を照れてるんだよ。気持ち悪い。
季節は夏の終わりだが、冷涼な高地とあって時間帯によって、肌寒さを感じる土地柄ではある。しかし、
「
少々、気恥ずかしそうな色に耳の
「非道い! こんなに可愛い少年に向かって、何て言い草だ。アンタの師匠は、どんな教育してたのさ」
早くも慣れてしまったのか、
すると丁度、
「あ! これ
「あの野郎、こんな物で誤魔化しやがて。欲しけりゃ持って行け。どうせ、娼館の女にでもくれてやるつもりだったしな」
まだ、
あの野郎に対し、相当な不満を
参考までに。
「え~、そんなの駄目だよ。
具体的には、およそ
それでも、
「一体、何が欲しかったのさ」
「毛」
「け?」
「珍しい動物の毛」
「ボクの毛で我慢する?」
「あれれ? 怒ってる?」
「誰ぞある」
「
勝手知ったるメイケイは、師であり主でもある
「あっ、お
訪問を重ね、
「なぁなぁ、
「もうすぐ、後継者探しで旅に出るんでしょ? ボクも連れて行ってよって、痛い!」
「この暴力
「
「どこがだよ! ただただ、痛いだけじゃんか!」
小さな騒ぎの中、特に事情も尋ねずメイケイが戻る。
「お待たせ致しました。ノルデの
白磁には、アーモンド・薔薇・ピスタチオのクリームが、メレンゲの焼き菓子に挟まれたアマレッティ。
小さなビスケット状のフロリーノが乗っている。フロリーノは、数種類の果実が練り込まれ、宝石のように散りばめられていた。
気温も考慮されたのか、ラウェンニ産の茶器からは、香草入りの甘湯が湯気を立てていた。
丁寧な挨拶を受け、絽候も居住まいを正す。
「
「はい。失礼致します」
「ボクの時と、態度も表情も違う」
出された茶菓子を
「んな事を言うような子ザルなんざ、連れて歩く余裕なんてないんだよ」
「過酷な旅になるのは、知ってるよ。遊びじゃない事も。でも、その方がボクの目的も果たしやすいんだ」
「何言ってるんだ。子ザルの役目は、帝国で泥遊びだろ?」
「ふっふっふ~ん。そんな事を言われても、動じないもんね。実は皇帝サマに、ちょっとお願いしたら
「近々、皇帝サマからお手紙が届くよ」
差し入れの茶で喉を湿らせようと、
「
間もなく、今度は弟のウンケイが事の次第を伝えに来た。
「どうしたんだ、急使でも来たのか?」
「シザーレ
ウンケイの知らせに、
「三日前、シザーレ
「壊滅って、ご自慢の
「バローツ副団長が集めた報告によると、中央を含めた多くの
「それで、シザーレが壊滅した理由ってのは?」
「現在は障壁が展開され、詳細は一切不明だそうです」
「おかしいだろ。どうやって壊滅を確認したんだ。それなら、助けを求めて当然だろうがよ」
「報告は、先程までの内容です。これは私見ですが、シザーレ
「助けを求めねぇってか? つまり、全滅はしてないって事だよな」
緊急事態に、
「じゃ、ボク帰るね。これから忙しくなるんでしょう?」
「子ザルの
「コ、
余りの無作法に、ウンケイは
「善いの善いの。お茶菓子、ごちそうさま」
笑顔の
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