八の節 八聖・璜準太師。 その一
長身痩躯の金髪碧眼。大層見栄えする青年が、蹴り倒した貴族の子弟を、目尻が
「こっ、
「ああ、悪いよ。現在進行形で」
世間的な身分では、王侯貴族の方が上だ。しかし、その王侯貴族の権力を振りかざしていた側が、敬語を遣い
璜準太師。この尊称が全てを物語る。
その直下の地位が、
初代・
普段の役職も関係するが、璜準太師には、もう一つ近寄りがたい理由があった。
やや目尻が下がる、優男の
「散れ、目障りだ」
王侯の
今にも舌打ちしそうな顔を表情に浮かべているが、本人達は気付いていないようだった。
「渋々、来た早々これかよ。金銭で資格をバラ撒くから、あんなのが増えるんだよ。
悪態をつく
東の大陸・カヤナからもたらされた
ただ、贅沢な高級品に数えられ、清貧を
「安心しろよ。煙草じゃねぇから」
言った
「
乳香とは、香料の一種。
原料は、北壁戦線と称されるエーメ・アシャントにある、坑道から採れる化石鉱物。同じく、
また、目的や精製によって、匂いや効能が変化するのも特徴と言える。総じて、柑橘・草木系統の芳香が漂う。
そんな
「
「聖職帽と儀仗。せめて、これだけは忘れないで下さい」
丁度、子熊が姿勢良く二本脚で立ち上がり、服や靴を身に着ける
「要らねぇって。これ、前が見えねぇから苛々するって言ってるだろうがよ。クソ真面目に顔を隠してるのは、融通が利かねぇ奴か、訳ありの奴だけだ」
一番の訳あり代表の
そんな、三名の貴重なやり取りを目前にする少年は、礼節を破綻させた。
「ハ、ハド。
ついに、礼節の構えと沈黙を破ってしまったセリスが、興奮気味に目の前にいる英雄達に熱視線を送っている。
ハドは、黒い
その気配に、これまで何も言い出さなかった少年二人に対し、
「そっか。これ面倒な習慣だな。発言を許す」
体裁を整えようと、少年二人は改めて一礼する。顔を起こしたハドは、
不機嫌そうに視線を
「も、申し訳ありません。連れが失礼な物言いをしてしまいました。どうか、お許し下さい」
礼節と言うよりも、逃避のために今一度、ハドは一礼を重ねた空気を撒き散らした。
「そっちの美少年、お前さんの事を〝ハド〟って呼んだ?」
色々と反論したい様子を見せる少年二人に構わず、
「あ~ぁ、お前さんが、ユタカが言ってた〝坊ちゃん〟か? って事は、隣の美少年が〝小生意気セリス〟?」
自身の言われように、物を言いたげに複雑な表情をセリスが浮かべる。それをよそに、ハドが知己の名に食いつき質問してしまう。
「
「おいこら。質問に質問を重ねるんじゃねぇよ」
長身の
「面倒だから、俺から答えてやるよ。ユタカとは上級聖職への修道で一緒になった。同期って奴だな」
「いつだったか、周りが悪さしないように手を回してくれって頼まれたけど、すっかり忘れてたわ。済まねぇな。俺、その手の話しに興味ないから放置してた。俺に頼むのが間違いだったな。それに、もう意味ないようだし?」
どうやら
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