六の節 交流会。
スーヤ大陸を横断し、主要幹線を繋ぐ世界一の大街道の名は、
大陸で、最初の日の出を迎え、東で最も栄えるのは、
最後の日没を見送る、スーヤ大陸の西で最も栄えるのは、シザーレ
もう一つ。地理的に、やや
世界図のレーフにて、繁栄と富を掻き集める皇帝が統治する帝国領。最大の人口と軍隊を抱え、最新の文化を発信する役割を担っていた。
レーフ暦・二一五年。
〝人外大戦〟と語られる戦争は、初代・
誰にも止められない大戦に、制止を叫ぶ堂々とした声が立つ。当時は帝国の片鱗もなく、労働者を大量に住まわせていた名前もない地域だった。
雑多に集まる働き者達に、権威も武力も、戦略も立てられる訳がない。
その切なる声に、応えた者達がいた。
今も、
人外集団と
以来、平和を叫んだ働き者の集まりは、法典の教えと、
人外大戦の開戦のきっかけ。それは、
悲劇の発端を文化的に収める場を、帝国は定期的に設けた。それが、交流会と呼ばれる人材交換だった。
◇◆◇
淑女が
スーヤ大陸の、西部海岸線沿いの採石場。カヤナ大陸の北部の山岳地帯。そこから多数発掘された、化石化した
主に、黒や濃藍色の鱗は宮殿や権力者の屋根材となって連なった。
「本日、聖シャンナ側の見届け役は〝
「
準備されていたであろう、淀みない卑屈な言い訳が、宮殿敷地内にある迎賓会館の大広間に漂う。
シザーレ
それでも、美しい容姿が本来の不満を覆い隠し、
性的魅力に溢れる美女の
無論、下心と言う名の色眼鏡越しだからこそ現れている。
「ご丁寧に、恐れ入りますわ。単なる興味です。代替わりされてから、
年齢不詳の妖しい笑みが真紅の唇に乗る。期待する返答の食い違いを、やんわりと指摘した。
世界が共有する程、美の粋を集めた女性には違いない。乳白色の肌。長い黒髪を後ろに
クラーディアが動くたびに揺れる、最も価値がある真珠と高価な宝石で彩られた装飾よりも、視線が行きがちになる場所がある。
余裕がない礼服に浮き出る魅惑の稜線。特に胸元の両房が、異教徒の制服から解放を求め激しく主張する肢体だった。
しかし、所詮は相反する油断ならぬ交渉相手だと、ようやく
「失礼します。クラーディア教師。パシエ殿が、宮殿から下がられましたので、控えの間へとご案内致しました」
不穏な壁が構築される中、聖シャンナ側の使者が
聖シャンナ側の使者の声に安堵したのは、同じ聖シャンナ側の役人達だけだった。
「恐縮ですわ。落ち
「は? 内親王殿下が賞賛される使役獣を飼い馴らす、騎士様ですよね」
目的に合わせ、相手を支配し、従属させ行使する職種の一つに〝
今では広義となり、一括りになっていた。相手とは、農耕用の牛馬から、軍馬。運搬用の大型飛竜、使役獣にまでに至った。
当然、パシエに従属する大きな白い犬は、一般的な観点から言えば〝使役獣〟となる。
「手続きを進めても?」
「あ、はい。まずは、こちらの書面に、クラーディア教師の署名と、シザーレ印章の
「承知致しました」
分かりやすいくらいの順位を知らしめたクラーディア。最後には、愛想も消した硬質な美女に収まり、滞りなく役目を終える事に集中する。
「ご安心下さいな。グランツ・ハーシェガルドは、我々シザーレの名に懸けて、彼の尊い生命を預かります」
世間の噂を無視し、クラーディアは教師らしい眼光を胡桃色の双玉に宿す。
既に、呑まれて圧倒されていた
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