一の節 鮮血の獣。
鱗粉の一片が、青白い月夜に淡く舞う。
広域に散る小雨の粒が、下から上へ踊りながら遊ぶ
それは、生命の円環。
それは、
それは、世界を席巻し、牽引する力の方向。
その、青く冴える月下。
不自然に拓けた平地には、異形を
喉を震わせ吐き出される大音量の咆哮は、その欲望を表す歓喜と死の
黒獅子の双眼は鮮血色。その禍々しい視界に収まるのは、現実にある危機とは隔絶した不動の姿勢。
淡く青白い明度は、黒の
「たまには、正攻法で行ってみようか」
「任せる」
会話する二種の音は、低く通る青年の声。
人影を宿すには長身ではあるが、差は歴然だった。黒獅子の
大きな街道から外れ、棲息する獣の気配すら消えてしまった深い森林地帯の先にある現場。
元より近くには人の集落、最後の砦たる
この黒獅子のように〝ケダモノ〟と呼称される異形種が各地で
この場面でさえ、ほぼ同じ背丈の二つの形容は
目深に被る黒い
しかし、黒の靴底は地面に触れず、何かの抵抗によって空間の上に乗っていた。
運悪く風の
「足場に問題はない」
黒の装束姿の青年が放った、確認の一言の直後。事態は動き出す。
無垢だった
あるいは夜空に消え失せる事なく、黒い巨躯に
黒い巨軀に
凄まじく整う
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