2 ドッペル説とゲンガー論




"今、僕の目の前にクローンで作られた僕が現れたなら、どちらの僕も死ぬだろう。"






僕をゲンガー君として、もう一人の僕をドッペル君だと仮定する。



ゲンガー君はドッペル君を見て嫌悪感に押し潰されて死ぬだろう。死因は圧死。



ドッペル君はゲンガー君を見て無い物ねだり様に嫉妬して狂い死ぬだろう。死因は狂死。


ご冥福をお祈り致します。





ゲンガー君もドッペル君も僕であって僕でない 。ゲンガー君もドッペル君も必死に生きてきた。それなのにどこかに縮まらない差がある。もがき続けた結果がこれだ。

否、もがき続けたからこその結末なのかもしれない。

僕は僕の持っていないものを持っている。僕たちは同じ色を見ていたとしても、違う眼を持っていて映り方は違う。





僕の分裂体はお互いを嫌い合うと同時に認め合う。殺し合って、傷をなめ合い、抱擁して、隠し持ったナイフで突き刺す。お互いが混ざり合いながら混ぜながら、死の間際笑うだろう。






他人が羨ましくって妬ましくって。それでも、個々の美しさも汚さもすべてすべて受け入れて僕は僕自信を好きになるしかなかった。





ドッペル君とゲンガー君、こんにちは。

ドッペル君もゲンガー君も幸せになって下さい。そして、死んだら語り合いましょう。僕の過去の分岐点と来世について。



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人間不信、自分不信。 水田真理 @mizutamari_tukitomo

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