潁川陳氏

陳寔1  末子、陳諶   

潁川えいせん陳氏 陳寔ちんしょく

 既出:荀彧、荀靖



陳羣ちんぐんは若いころから天才。


あるとき、いとこの陳忠ちんちゅうを相手取り、

それぞれの父、陳紀ちんき陳諶ちんしんのどちらが

より徳に満ちた存在であるかを

言い争ったが、決着がつかなかった。


ふたりは祖父、陳寔のもとに行く。

どちらの父がより優れているのですか、

その裁定を下してもらいに行ったのだ。


陳寔は言う。


「紀と諶の間には年齢差があるだけだ。

 兄であるから、弟であるから、

 と言う事で優劣など付けられぬよ」



さて、では、その陳諶。

かれの言動を先に見てみよう。

一言で言うと、ヤバい。


ある時、一人の客が陳諶に問うている。


「そなたの父上、陳寔どのは

 どれほど徳深き人であるのかな、

 天下が担うほどの

 名の重さの持ち主なのだろうか?」


すると陳諶は答える。


「そのようなこと、

 私が分かるわけもないでしょう。


 父上について例えるならば、

 私は泰山たいざんのふもとに生える

 月桂樹の如き気持ちになるのです。


 振り仰げば万丈の高さの峰に

 甘露が降るのを見ることとなります。


 俯けば底なしの泉。

 滾滾と湧き出る清水は尽きません。


 このありさまから、どうして月桂樹が

 泰山がいかほど高いか、

 ふもとの泉がいかほど深いかを

 知ることができるでしょうか?」




陳元方子長文有英才,與季方子孝先,各論其父功德,爭之不能決,咨於太丘。太丘曰:「元方難為兄,季方難為弟。」

 陳元方が子の長文に英才有り。季方が子の孝先と、各おの其の父の功德を論ざば、之を爭えど決める能わず、太丘に咨る。太丘は曰く:「元方を兄と為すも難く、季方を弟と為すも難し」と。

(德行8)


客有問陳季方:「足下家君太丘,有何功德,而荷天下重名?」季方曰:「吾家君譬如桂樹生泰山之阿,上有萬仞之高,下有不測之深;上為甘露所霑,下為淵泉所潤。當斯之時,桂樹焉知泰山之高,淵泉之深,不知有功德與無也!」

客有りて陳季方に問うらく:「足下が家の君太丘にては何ぞの功德有りや、天下に重名を荷いたらんや?」と。季方は曰く:「吾が家の君を譬うるに桂樹の泰山の阿に生えたるが如くせば、上には萬仞の高有り、下には不測の深有り。上にては甘露の霑ぜる所を為し、下にては淵泉の潤いたる所を為す。當に斯くなる時、桂樹に焉んぞ泰山の高を、淵泉の深を知らんか? 功德の有りたると無かりたるは知らざるなり!」と。

(德行7)



潁川陳氏を語るにあたって、ここでは魏の重臣であった陳羣を起点にしておきたいと思います。世説新語そのものは陳寔を世説新語の起点として置いている印象があるわけですが、三國志マンたちとしては、陳羣はさておき、その父陳紀からして割ときつい。いわんや祖父をや、と言う感じ。党錮の禁からきっちり調べる人だったらそうでもないでしょうけど。というかまぁ、要は俺が見通しつけやすいようにの処方です。


陳寔

「世説新語の主役」のトップバッター。とにかくこの人のエピソードの「徳深さ」を見てると、えっなにチーム世説新語、潁川陳氏からわいろでも受け取ったの? みたいな気分にさせられる。まぁ実際すごい人だったんでしょうけど。


陳諶

この人が、「孫策そんさく」の条で出てきた陳逵ちんきさんのご先祖とのことである。父の陳寔、兄の陳紀とともに賢者として並び称されたが、夭折したという。


陳忠

へー、こんなひといたんだ。

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