殷仲堪2 文学の徒    

殷仲堪いんちゅうかんと言えば、

名の通った文学の徒である。



例えば鍾会しょうかいさんが議論の中心にいた、

才性四本論さいせいしほんろん

性格と才能はリンクするのか、

更にそれは立身とどうかかわるのか、

みたいなことをあーだこーだと

こねくり回す感じのやつだ。


こねくり回されまくったあげく、

もはや常人にはちんぷんかんぷんな

代物と化していた。


で、殷仲堪。清談のトップランナー。

人々は彼が、清談に関する

あらゆるテーマを研究し尽くしている、

と思っていた。


それを聞き、殷仲堪、ため息。


「私が四本論を理解できていれば、

 もっとうまくやれるのだが……」



また、こんなコメントを残してもいる。


老子ろうしを三日読まずにいると、

 舌の根がこわばるかのような

 思いがするのだ」




殷仲堪精覈玄論,人謂莫不研究。殷乃歎曰:「使我解四本,談不翅爾。」

殷仲堪は玄論を精覈せば、人は研究せざる莫しと謂う。殷は乃ち歎じて曰く:「我をして四本を解せしむらば、談は翅に爾らざらん」と。

(文學60)


殷仲堪云:「三日不讀道德經,便覺舌本閒強。」

殷仲堪は云えらく:「三日道德經を讀まざらば、便ち舌が本の閒強なるを覺ゆ」と。

(文學63)




淡々と研鑽を重ねる文学の徒、と言う感じのするコメントで素敵。ただこの人、やっぱり文学者になるべきだったんだろうね……政治の世界は向いてなさそうですわ……。

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