王国宝2 荊州の後継人事 

荊州けいしゅう刺史の王忱おうしんが死んだ後、

後任は誰がいいだろうか、

と言う話になった。


この時、司馬道子しばどうし

王忱の弟、王国宝おうこくほうを推薦していた。

朝廷内では推薦通りになるのだろうな、

とうわさが飛んでいた。


その話を聞きつけた王国宝の書記、

夜も遅い時間ではあったが、

「荊州の人事が定まったようです」

と報告書を書き、王国宝に届ける。


マジかよヒャッハー!

西府は俺のもんか!


大喜びの王国宝、門を開放し、

幕僚たちを招いた。


ここで荊州刺史の人事についての

話こそ出なかったが、

上座の王国宝、すっげえにこやか顔。


翌朝、王国宝は改めてこの人事を

確認するため、朝廷に使者を飛ばす。


「えっ、荊州刺史なら、

 陛下直々のお達しで

 殷仲堪いんちゅうかん様に決まりましたよ?」


ファッ!?


報告を受けた王国宝、

すぐさま例の秘書を召喚。

大いに責めたてた。


「お前、お前は!

 どうしてわしを誤らせるような

 報告をしたのだ!」




王大喪後,朝論或云「國寶應作荊州」。國寶主簿夜函白事,云:「荊州事已行。」國寶大喜,而夜開閤,喚綱紀話勢,雖不及作荊州,而意色甚恬。曉遣參問,都無此事。即喚主簿數之曰:「卿何以誤人事邪?」


王大の喪じたる後、朝論にて或いは云えらく「國寶を應に荊州に作さるべし」と。國寶が主簿は夜に白事を函じ、云えらく:「荊州が事は已に行われぬ」と。國寶は大いに喜び、夜に閤を開き、綱紀を喚ぶ。話勢は荊州に作さるに及ばざると雖も、意色は甚だ恬なり。曉に參問を遣らば、都べて此の事無し。即ち主簿を喚びて之を數めて曰く:「卿は何ぞを以て人事を誤りたらんや?」と。


(紕漏8)




この秘書氏、王国宝のこと嫌いだったんでしょうかねえ。「荊州刺史の後継人事が決まった(誰に決まったかは言っていない)」的な。だとしたらなかなかにエグくて素敵である。そう言うことやらかす人が陳郡謝ちんぐんしゃ氏あたりの誰かだったら意味もなくサイコーに楽しいんですが、なかなかそんなこともありませんですわね。

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