王国宝1 獄吏の貴たるを 

司馬道子しばどうしの下でぶいぶい言わせていた

二人の佞臣、王緒おうしょ王国宝おうこくほう

なお、共に太原たいげん王氏である。


彼らはツーカーの関係として

宮中の人事を好きに取り仕切っていた。


同じく太原王氏の王忱おうしんは、

ついでに言えば王国宝の

腹違いの兄なのだが、

そんな二人の様子を見て、

ヤバい、と思う。


ある時、王緒に言っている。


「おまえね、

 そんなケーソツに振る舞って。


 前漢ぜんかんの丞相、

 周勃しゅうぼつですら言っているぞ。

 獄吏があんなにも恐ろしいものとは

 思わなかった、とな。

 お前も獄吏の貴さ・・を学びたいのか?」




王緒、王國寶相為脣齒,並上下權要。王大不平其如此,乃謂緒曰:「汝為此欻欻,曾不慮獄吏之為貴乎?」


王緒、王國寶は相い脣齒と為り、並べて權要を上下す。王大は其の此くの如きに平らかならず、乃ち緒に謂いて曰く:「汝の此の欻欻を為すに、曾て獄吏の貴為るを慮らざらんか?」と。


(規箴26)




周勃

前漢の時代に丞相まで務めたすごい人。しかし讒言があり謀叛の疑いを掛けられ、しばし獄に繋がれた。牢獄からなんとか解放された周勃が洩らしたコメントが、「いやぁ、わしは百万の兵も率いたことがあったというのに、獄吏があそこまで偉いものだとは思いもよらなんだ!」であったという。周勃さん、職務に徹する、プロの鑑みたいなお人にぶち当たってしまったらしい。


なお王国宝と王緒は、その後まもなく王恭おうきょうの挙兵を恐れた司馬道子によって殺されている。無事獄吏の貴さは学べたようである。

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