蘭亭会参加者

王粛之  奴隷レベルの質問

蘭亭会らんていかい参加者 王粛之おうしゅくし



王羲之おうぎしの第四男、王肅之。

登場するエピソードの数が

すべてを物語っている人である。


苻堅ふけんのいとこ、苻朗ふろう

淝水ひすいの戦いののちの混乱の中、

東晋とうしんに亡命してきた。


王粛之、苻朗に対して興味津々である。

べったりと張り付き、

中原のひとのことや風土などを

際限なしに聞いて回ってくる。


苻朗、イラッと来る。


そこに気付く王粛之ではない。

更に問う。


「中原では、奴隷をどのくらいの値段で

 買えるのでしょうね?」


苻朗、答えるよ。


「慎み深く、見識あるものならば

 数十万銭にも及びます。


 一方でろくに考えようともせず、

 奴隷のような下らぬ問いしか

 できないものであれば、

 数千銭でとどまりましょう」




符朗初過江,王咨議大好事,問中國人物及風土所生,終無極已。朗大患之。次復問奴婢貴賤,朗云:「謹厚有識,中者,乃至十萬;無意為奴婢問者,止數千耳。」


符朗の初に江を過ぐるに、王咨議は大いに好んで事とし、中國の人物、及び風土の生まるる所を問い、終いには極めて已みたる無し。朗は大いに之を患らう。次いで復た奴婢の貴賤を問わば、朗は云えらく:「謹み厚く識を中に有す者は乃ち十萬に至らん。意無くして奴婢の問いを為す者、數千に止まりたるのみ」と。


(排調57)




苻朗

なんか注がめっちゃ分厚い。とにかく見識にあふれて剛直なすげえ人だと書かれていて、それゆえに讒言にあって殺された、と書かれている。三十年ほど前、東晋に亡命してきた後趙こうちょう系の皇族は皆殺しの目に遭ってるけど、前秦ぜんしん系の人たちは割と厚遇されてますよね。この人と言い、苻宏ふこうと言い。じわじわと胡漢融合が進みつつあった、ってことでいいのかな。

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