王徽之1 弟と仲良し  

桓温幕僚 王徽之おうきし

 既出:諸葛亮3、謝安38、謝安52

    謝安58、謝安63、桓沖3

    左思2、支遁11



フリーダム兄弟、王徽之おうきし王献之おうけんし

この二人、結構ワンセットである。


例えば二人が同じ部屋にいた時、

突如として火災が発生したという。


ここで王徽之は大慌てで逃げ出し、

履き物を履くのも忘れる有様だった。


一方の王献之は側仕えを呼び、

彼らに抱えられて脱出。

その面持ちは

いつもと変わらないものだった。


この例を見て人びとは、

器量の差を見て取ったという。



この兄弟、彼らの兄についても

批評を下したりしていたようだ。

王献之が王徽之に宛て、

こんな手紙を書いている。


凝之ぎょうし兄貴はしょんぼりとして

 つまんねえお方だが、

 酒が入ると前後不覚になって

 家に帰るのも忘れちまう。


 あれはあれで面白いよな」



また嵆康けいこうが著した『高士伝こうしでん』を読み、

そこに出てくる人物のこと、

また嵆康のコメントについて

語り合ったりしている。


王献之が井丹せいたんの高潔さを称賛。


いわゆる隠者で、

かれのことを手を変え品を変え

迎え入れようとした

名士たちの歓待を

軒並み鼻で笑い飛ばし、

そして結局官途に就かぬまま

死んでいった存在である。


すると王徽之は言う。


「いや、司馬相如しばしょうじょの世を

 舐め腐った態度には敵わんさ」


かん景帝けいていに仕えるも

好き放題の振る舞いをし、

街中にふんどし一丁で出たり、

仮病を使って官途を辞したりする。

その作品である『大人賦たいじんふ』では、

ありありとその肝っ玉っぷりが

描き出されていたという。


まぁ、この二人の趣向が

どういう方面に出てたのかが

よくわかるピックアップである。




王子猷、子敬曾俱坐一室,上忽發火。子猷遽走避,不惶取屐;子敬神色恬然,徐喚左右,扶憑而出,不異平常。世以此定二王神宇。

王子猷、子敬の曾て俱に一室に坐せるに、上にて忽に發火す。子猷は遽て走りて避ぐるも、屐を取る惶なし。子敬が神色は恬然とし、徐ろに左右を喚び、扶憑し出で、平常に異ならず。世は此を以て二王の神宇を定む。

(雅量36)


子敬與子猷書,道「兄伯蕭索寡會,遇酒則酣暢忘反,乃自可矜」。

子敬は子猷に書を與え、道えらく「兄伯は蕭索寡會なれど、酒に遇さば則ち酣暢し反るを忘る、乃ち自ら矜るべきなり」と。

(賞譽151)


王子猷、子敬兄弟共賞高士傳人及贊。子敬賞井丹高潔,子猷云:「未若長卿慢世。」

王子猷、子敬の兄弟は共に高士傳の人及び贊を賞す。子敬の賞せる井丹の高潔なるに、子猷は云えらく:「未だ長卿の慢世なるが若くにせず」と。

(品藻80)




兄伯

彼らの兄であるから夭折した長男の王玄之おうげんしか、五斗米道ごとべいどうの反乱がおこった時に「ワイも五斗米道信者だし仲間! ヨユー!」とか舐めてたら殺された次男の王凝之のどちらか、と言うことになる。王玄之についてはあまりにも事跡が残っていないので、まぁ王凝之のことでしょう、という風になっている。弟たちにも軽く見られて妻(※謝安しゃあんの姪にして謝玄しゃげんの姉、謝道韞しゃどううん)からも軽く見られてとか地獄やな凝之どん……。

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