王珣4  離間の計    

司馬道子しばどうしのそばに侍っていた佞臣、

王緒おうしょ王国宝おうこくほう

色々ろくでもないやつらだった。


王緒さん、ある日せっせと殷仲堪いんちゅうかん

あることないことを王国宝にチクる。

鬱陶しい。


殷仲堪、王珣おうしゅんに相談する。

どうにかならんかねあのアホども?


すると王珣は言う。


「ちょくちょく王緒のもとに

 訪問されると良い。


 それから人払いをしたうえで、

 どうでもいい話をされよ。

 そうすれば勝手に

 あの二人は離間されよう」


なるほど、その手が!

殷仲堪、さっそくこの助言を実行。


そわそわするのが王国宝である。

えっちょ、何話してんのお前?

そうやって王国宝が聞いてきても、

王緒としては、こう答えるしかない。


「ただ会ってるだけだよ。

 別に何を話しているわけでもない」


いやいや、そんなわけないでしょうよ。

王国宝としてはもう、

王緒を疑うしかない。


こうして二人は疎遠となっていき、

殷仲堪に関する

チクりは収束するのだった。




王緒數讒殷荊州於王國寶,殷甚患之,求術於王東亭。曰:「卿但數詣王緒,往輒屏人,因論它事,如此,則二王之好離矣。」殷從之。國寶見王緒問曰:「比與仲堪屏人何所道?」緒云:「故是常往來,無它所論。」國寶謂緒於己有隱,果情好日疏,讒言以息。


王緒は數しば殷荊州を王國寶に讒ぜば、殷は甚だ之を患い、術を王東亭に求む。曰く:「卿は但だ數しば王緒を詣で、往きて輒ち人を屏い、因りて它事を論ずべし。此くの如くせば、則ち二王の好みは離れたらん」と。殷は之に從う。國寶は王緒に見えるを問うて曰く:「比と仲堪は人を屏いて何ぞを道いたる所ならんか?」と。緒は云えらく:「故より是れ常に往來せるのみ、它に論ぜる所無し」と。國寶は緒に己に隱有りと謂え、果して情好は日に疏たれば、讒言は以て息む。


(讒險4)




王国宝

東晋末を代表するクソの一人(トップオブクソは司馬道子)。この人たち絡みについても紹介しておきたいもんですね。蘭亭会が終わったら名族に行こうと思ったけど、その前に「東晋末のイカれた奴ら」を紹介しておきたいと思います。


王緒

この人も太原王氏。王延の孫で、王乂の子。……えっ、どっちも初耳なんですけど。つーか琅邪の王乂とは別人ですよね? うーんこの。どうでもいいけど劉孝標注だと王乂の官職を「撫軍。」って言い切ってるけど、これ明らかに撫軍「参軍」ですよね? 王緒パパの世代って、めっちゃ簡文さまの現役時代じゃね?

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