劉惔5  孫統との付き合い

劉惔りゅうたん孫綽そんしゃくとは

大した付き合いをしていなかったが、

その従兄の孫統そんとうとは付き合いがあった。


その孫統については、

こんなことを言っている。


「孫統は狂なるひと、と言えるな。

 ふらっとどこかで数日も逗留し、

 で、帰ってこようとした道半ばで、

 また先ほどまでいた場所に

 引き返したりもする」


また一門とも

親交を深めていたようである。

孫統の妻の父、蕭輪しょうりん

かれについて、簡文かんぶんさまに言っている。


それは蕭輪を三公に次ぐ要職、

九卿のひとつ「太常たいじょう」に挙げようか、

と相談していた時のこと。


「蕭輪様について、すぐに三公に

 挙げられるか、と聞かれれば、

 正直、わかりません。


 しかし、それより下の

 お役目であれば、

 見事にこなされるでしょう」




劉尹云:「孫承公狂士,每至一處,賞翫累日,或回至半路卻返。」

劉尹は云えらく:「孫承公は狂士なり、每に一處に至らば、賞翫せること累日にして、或いは半路に至らば回りて卻き返る」と。

(任誕36)


蕭中郎,孫承公婦父。劉尹在撫軍坐,時擬為太常,劉尹云:「蕭祖周不知便可作三公不?自此以還,無所不堪。」

蕭中郎は孫承公が婦の父なり。劉尹は撫軍が坐に在り、時に擬して太常と為らば、劉尹は云えらく:「蕭祖周にては知らず、便ち三公と作すべしや不やを。此れより以て還ざば、堪えざる所無きなり」と。

(賞譽75)




いまふと気になって調べたら、世説新語中で「狂」字って六回しか使われていない。その内セリフで誰かの形容として使われたのが四回、うち二回は明帝司馬紹しばしょうの娘二人、そして一回がここ、「司馬紹の娘を嫁に迎えた」劉惔である。なんだこれ、司馬皇族家では「狂」って言葉がポンポン飛び交ってたのか? っつーか、こういう「特定の誰かが多く使う傾向のある字」ってのもまた調べると面白そうである。


ちなみにもう一回は孔愉こうゆがキチガイ孔羣を抑え込みながら「おれのいとこはトチ狂ったのだ、どうか勘弁してやってくれ!」って叫ぶシーン。やっぱり司馬氏のファミリーが使ってるニュアンスとはちょっと違いそうだ。

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