謝尚6  高柔さんがんばる

高柔こうじゅうと言う、なかなか尖った人がいる。

会稽かいけいに住んでいた頃には、

謝尚しゃしょうに重んぜられていた。


いちど建康けんこうに出て来てみたはいいが、

一線級の名士である、王濛おうもう劉惔りゅうたんとは

知遇を得ることができなかった。


そこで謝尚さん、助け舟。

劉惔に言うのだ。


「高柔も名声を得るために

 ずいぶん頑張っているようだが、

 なかなか芽が出ないのだよなあ」


すると劉惔さんは言う。


「やれやれ、鄙地には

 住み着いていたくないものだな!

 議論の片隅に何とか滑り込んでも、

 結局は他者の議論に

 ついて行くしかないのだから」


カンジワルイ。

絶好調ですね劉惔さん。


そんなん聞けば、当然高柔、頑なにもなる。


「はん! もとよりあいつには

 何も求めちゃいないさ」


そしてこの言葉、

すぐに劉惔さんの耳にも届くのだ。


なので劉惔さんは言う。


「実際のところ、おれ自身

 かれにできることなど

 何もないわけだしな」


ただ、それでも劉惔さん、

宴会だなんだがあるごとに、

安固あんこどのも迎えたらどうだ」

と、水は向けたそうなのである。


あ、ちなみに安固とは高柔のことだ。




高柔在東,甚為謝仁祖所重。既出,不為王、劉所知。仁祖曰:「近見高柔,大自敷奏,然未有所得。」真長云:「故不可在偏地居,輕在角(角弱)中,為人作議論。」高柔聞之,云:「我就伊無所求。」人有向真長學此言者,真長曰:「我寔亦無可與伊者。」然遊燕猶與諸人書:「可要安固?」安固者,高柔也。


高柔の東に在せるに、甚だ謝仁祖に重んぜらる所と為る。既に出づれど、王、劉に知らる所と為らず。仁祖は曰く:「近きに高柔を見ゆるに、大いに自ら敷奏せど、然して未だ得る所有らず」と。真長は云えらく:「故より偏地に在るべからず。輕きに居りて角(角弱)が中に在り、人が為に議論を作す」と。高柔は之を聞き、云えらく「我れ、伊れに求む所無かりき」と。人の真長に向いて此が言を學ねたる者有らば、真長は曰く:「我れ寔に亦た伊の者に與うべかる無し」と。然れど遊燕せるに猶お諸人に書を與うるらく:「安固を要うるべし」と。安固なるは、高柔なり。


(輕詆13)




謝尚さんが空気すぎる……

こんなのおかしいよ……



高柔

三国志に同姓同名がいるけど別人です。

割と隠者系。安固令に任じられたから劉惔さんに安固と呼ばれている。劉注では人物エピソードよりも奥さん(胡毋輔之こむほしの娘)にべた惚れしてました、任地でも奥さんに会いたくて会いたくて仕方なさそうにしてました、って部分が強調されてる。


なお、わりと機械的にエピソード並べてるはずなのに、なぜか次話にも彼が出てきます。

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