山濤6 才覚に互す度量
ただ事ではなかった。
ただ事ではなかったのだ。(重言)
山濤の奥さんである
えっと、あの二人との交友。
やばない?
なので奥さん、山濤に聞く。
「あの二人、大丈夫なのですか?
ずいぶん浮世離れした御仁ですが」
いやいやまぁ待ちなさいよ、
山濤さん、答えた。
「この何かと物騒な世情において、
わしが友と思えるのは、
あの二人しかおらんのだ!」
すると奥さん、こう言ってきた。
「
曹公の部下である
文公配下の
このとき、妻は僖負羈に
従者があれだけ優れた人物であれば、
その主もまたひとかたの人物である、
お前さまは曹公ではなく、
文公につくべきである、
そう進言しております。
この不安定な政情において、
お前さまの友がどのようであるかを
私も知っておくべきかと思うのです。
どこかでお前さまと御仁らとの交わりを
覗き見せては頂けませんでしょうか?」
オッケーオッケー、山濤快諾。
それから間もなくして、山濤の家に
嵆康と阮籍が遊びに来た。
奥さん、二人に泊まってもらってよ、と
山濤にお願いする。
その分、酒とお肉をがっつり準備。
……この妻、本気である。
そして三人の語らいを、奥さん、
のぞき穴からこっそりと観察した。
その日の三人の語らいは夜通し続き、
結局朝まで、眠ることもなかった。
二人が帰った後、山濤、
奥さんのところに行く。
「二人はどうだった?」
奥さん、答える。
「ぶっちゃけ、お前さまの才覚では、
あの二人に届いておりませんね。
お前さまのその度量を持って、
気に入っておられている気がしました」
そうだよ、山濤は言う。
「あいつらも常々そう言っているよ」
山公與嵇、阮一面,契若金蘭。山妻韓氏,覺公與二人異於常交,問公。公曰:「我當年可以為友者,唯此二生耳!」妻曰:「負羈之妻亦親觀狐、趙,意欲窺之,可乎?」他日,二人來,妻勸公止之宿,具酒肉。夜穿墉以視之,達旦忘反。公入曰:「二人何如?」妻曰:「君才致殊不如,正當以識度相友耳。」公曰:「伊輩亦常以我度為勝。」
山公と嵇、阮の一に面し、契れること金蘭が若し。山が妻の韓氏は公の二人との常の交に異なるを覺え、公に問う。公は曰く:「我、當年にして以て友とすべき者、唯だ此の二生のみ!」と。妻は曰く:「負羈が妻も亦た狐、趙を親しく觀たらば、之を窺わんと欲せんと意ゆ。可なりや?」と。他日、二人の來たるに、妻は公に之を止め宿せんことを勸ましめ、酒肉を具す。夜に墉を穿ちて以て之を視、旦に達するまで反れるを忘す。公は入りて曰く:「二人は何如?」と。妻は曰く:「君が才は殊に如かざるを致さん、正に當に、識度を以て相い友たるのみ」と。公は曰く:「伊れらが輩も亦た常に我が度を以て勝と為したり」と。
(賢媛11)
嵆康も阮籍も、晋に仕えることを良しとしなかった。嵆康に至っては処刑すらされている。どちらも当時の晋の政権にとっては鼻つまみ者だった。そういや阮籍も何曽さんに「アイツ処刑すべきですよ」って言われてましたわね。そんな二人と、マブダチとして付き合う。そのくせご本人は晋のトップオブザトップ。なんだこの人、ヤベえ。
晋の文公、曹公、僖負羈、狐偃、趙衰
このエピソード、劉注も箋疏も一切触れていない。「いやいやこんなの知ってて当然でしょ?」というわけだ。なんで他の、むしろそんなんわざわざ書くまでもねーだろレベルのエピソードを注釈でちょくちょく紹介してんのに、突然ここでは二人ともシカトしてくるんでしょうかねえ……? メジャーなエピソードの基準がもう、全然違うんだなーと感心した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます