桓玄14 詠懐詩     

桓玄かんげん荊州けいしゅうから長江ちょうこうを下り、石頭せきとう城へ。


そこで「りょう王・司馬珍之しばちんし逃亡」の

知らせを受ける。


この時、桓玄は簒奪のための

準備を万全に整えていた。


大きな船の看板に立ち、

盛大な鼓吹の音をバックに、

阮籍げんせき詠懐詩えいかいしを歌い上げる。


 簫管有遺音

 梁王安在哉

  簫管の遺れる音あるに

  梁王は安こに在り哉?


古の梁王「魏嬰ぎえい」について歌った詩だ。

それを司馬珍之の称号に

掛けて歌ったわけである。




桓玄西下,入石頭。外白:「司馬梁王奔叛。」玄時事形已濟,在平乘上笳鼓並作,直高詠云:「簫管有遺音,梁王安在哉?」


桓玄は西より下り、石頭に入る。外にて白さば:「司馬梁王は奔叛す」と。玄は時にして事形を已にして濟したるに、平乘の上に在りて笳鼓は並びて作り、直ちに高らかに詠いて云えらく:「簫管に遺音有り、梁王は安こに在り哉?」と。


(豪爽13)




詠懐詩 三十一


駕言發魏都

南向望吹臺

 駕しては言れ魏の都を發ち

 南に向かいて吹臺を望む


簫管有遺音

梁王安在哉

 簫管の遺れる音あるに

 梁王は安くに在り哉


戰士食糟糠

賢者處蒿莱

 戰士は糟糠を食らい

 賢者は蒿莱に處る


歌舞曲未終

秦兵復已來

 歌舞の曲は未だ終わらざる

 秦兵は已に復くて來たりぬ


夾林非吾有

朱宮生塵埃

 夾林は吾が有に非らず

 朱宮に塵埃の生ず


軍敗華陽下

身竟爲士灰

 軍は華陽の下に敗れ

 身は竟に士灰と爲る


書き下し文は

http://lengjiaqianchucihou.blog.fc2.com/blog-entry-102.html#31

よりお借りしました。



詠懐詩全体が世の中のはかなさを歌っているものになる。ここでも梁王が逃げ去ってしまった後の、敗亡の様子が描かれている印象がある。すいません訳はぶん投げてます……まぁ、「えっらそーな梁王も、こうなっちまっちゃ形無しだな、ん?」的な感じでしょうか。なお梁王と書かれていますが、これは魏王と比定される、のだそうです。まぁ確かに梁から近い。というわけで、戦国魏の滅亡の儚さが歌われているそうです。つまり阮籍が滅びなんとしている曹魏を儚む感じですね。


司馬珍之

司馬晞しばき(簡文帝の兄)のひ孫。と言う事は安帝世代よりもさらにひと世代下である。桓玄打倒クーデターの成功に際して公職に復帰しているが、のちに劉裕りゅうゆうに殺されている。その時の記述が「裕將弱王室,誣其罪害之」。晋室を弱らせようとして、粛清した、と言うのだ。うーん劉裕さん怖い。まぁ穴埋めもしてますしね!

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