桓玄5 羊孚さんのこと2
年若くして死亡した
桓玄第一の側近である
やはりかれは高く買われていた。
卞範之が
東京都知事的な役職についた時、
羊孚が南方から一時帰還していた。
卞範之のもとを訪問した時に、
羊孚は言う。
「申し訳ござらん、病はげしく、
まともに座ってもおれぬのです」
そこで卞範之、自宅のベッドに
羊孚を案内、横たえさせた。
枕が必要だ、という事だったので、
それも貸し出してやる。
そこから卞範之、朝から暮れまで、
じっと羊孚のことを見守る。
やがて何とか復調した羊孚、
自宅に戻ることとなった。
卞範之は言う。
「羊孚どの、そなたこそが哲理を説く
第一人者だと思っている。
どうか、早々に逝かんでくれ」
そんな卞範之の願いもむなしく、
羊孚はあえなく逝去した。
後日、桓玄がまさに
簒奪をなそうか、という時に。
桓玄、卞範之に語っている。
「羊孚がいたとしたならば、
俺が帝位にのぼるのを
懸命に止めただろうな。
腹心の羊孚、爪牙の
二人を喪いながらも、
俺は今帝位を奪わんとしている。
さて、天はこのことを
許してくれるのかな」
卞範之為丹陽尹,羊孚南州暫還,往卞許,云:「下官疾動不堪坐。」卞便開帳拂褥,羊徑上大床,入被須枕。卞回坐傾睞,移晨達莫。羊去,卞語曰:「我以第一理期卿,卿莫負我。」
卞範之の丹陽尹為るに、羊孚は南州より暫し還り、卞が許に往き、云えらく:「下官は疾動にて坐せるに堪えず」と。卞は便ち帳を開きて褥を拂う。羊は徑ちに大床に上り、被に入りて枕を須む。卞は坐を回らせ傾睞し、晨を移し莫に達す。羊の去らんとせるに、卞は語りて曰く:「我、第一理を以て卿に期す。卿、我に負くこと莫れ」と。
(寵禮6)
桓玄當篡位,語卞鞠云:「昔羊子道恆禁吾此意。今腹心喪羊孚,爪牙失索元,而匆匆作此詆突,詎允天心?」
桓玄の當に位を篡わんとせるに、卞鞠に語りて云えらく:「昔、羊子道は恆に吾に此くなる意を禁ず。今、腹心の羊孚を喪い、爪牙に索元を失う,而して匆匆と此の詆突を作したるに、詎んぞ天心に允されんか?」と。
(傷逝19)
詎允天心?
ここではこんなことを自問している桓玄だが、晋書では
明らかに内容がバッティングしている。ただ、晋書もこの手のモノローグに平然と小説ぶち込んでくるクチの書物なので、まーなんつうかどっちも後世の創作でしょう。こう言うセリフからは、たぶん桓玄って人の実情は伺えなさそう。
卞範之
腹心は腹心なのだが、この条を見て一気に扱い軽かったんだろうなあ、という気がしてきた。いやこれ、
索元
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