王敦12 トイレのお作法 

王敦おうとんが武帝の娘を

嫁に迎えてまもなく。


トイレに行くと、

干したナツメがあった。

ウンコする時にくさいから

鼻に詰めるためのものだ。


「おっトイレに喰いモンとは典雅やな!」


ヒョイパクー。


トイレから戻ってくると侍女が、

金澡のトレーには水を、

瑠璃の椀には手洗いのための豆を入れ、

王敦にささげ持った。


「おっここでも喰いモンとは

 大盤振る舞いやな!」


水の中に豆ドバー。

ズルズルムシャムシャー。



宮中のルーチンを

まるで理解していない王敦に、

侍女たちは口を覆って

くすくす笑ったそーである。




王敦初尚主,如廁,見漆箱盛乾棗,本以塞鼻,王謂廁上亦下果,食遂至盡。既還,婢擎金澡盤盛水,琉璃碗盛澡豆,因倒箸水中而飲之,謂是乾飯。群婢莫不掩口而笑之。


王敦の初に主を尚うるに、廁に如き、漆が箱に盛らる乾棗を見、本は以て鼻を塞ぎたれど、王は廁上にて亦た果を下すと謂い、食し遂には盡くすに至る。既に還ざば、婢の金澡の盤に水の盛りたると、琉璃の碗には澡豆の盛りたるとを擎げたれば、因りて倒じて水中に箸け之を飲む。是れを乾飯と謂いたればなり。群婢に口を掩いて之を笑わざる莫し。


(紕漏1)




えっこれむしろ豪爽じゃない……?

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