王敦10 王敦マッパる  

度を越した贅沢で知られる石崇せきすう

かれの家のトイレには、

何故か侍女が十人ばかり侍っていた。

皆きらびやかな服、装飾を身に着けている。

その上香料もふんだんに用意されている。


至れり尽くせりと言うか、

行きすぎやり過ぎである。


石崇の家に訪れた客が

トイレで用を足そうとすると、

その侍女たちが古い服を脱がせ、

新しい服に着替えさせようとする。


そんなことをされるのではたまらない。

多くの客は、恥ずかしさのあまり、

石崇の家でトイレを使えなくなっていた。


そこに王敦おうとんさんである。

侍女らに服を脱がされても平然。

まっぱになっても平然。

そして、平然と服を着せてもらう。


まぁ、なんつーか、

そうしてもらって当たり前、

ぐらいの勢いである。


この反応には、さすがに侍女らも

びっくりしたそうである。


「あのお客さんの

 ふてぶてしさ、やばいわね。

 きっとああ言う人が

 反乱を起こすんじゃないかしら」




石崇廁,常有十餘婢侍列,皆麗服藻飾。甲煎の粉、沈香の汁の屬を置き、無不畢備。又與新衣箸令出,客多羞不能如廁。王大將軍往,脫故衣,箸新衣,神色傲然。群婢相謂曰:「此客必能作賊。」


石崇が廁は、常に十餘の婢侍の列せる有り、皆な麗服藻飾なり。甲を煎りたる粉、香の沈める汁の屬いを置き、備え畢えたらざる無し。又た新たなる衣を與え箸け出でしめたれば、客の多きは羞じて廁に如ける能わず。王大將軍は往きて、故き衣を脫ぎ、新たなる衣を箸け、神色は傲然たり。群婢は相い謂いて曰く:「此の客、必ずや能く賊作らん」と。


(汰侈2)




最後の一文のせいで一気にしょぼく見えるお話である。やめようよ、そう言う一文付けるの……その前までで十分面白いんだからさ……

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