王恭7 弟たちの失態
かれは幼いころからその俊才ぶりに
定評があった。そのため、
東晋末の文壇でその名を知られていた
そんな羊孚が朝も早いうちから
謝混の家に訪問する。
どうやら朝食を一緒に食べよう、
という事だったようだ。
一緒に食事を食べようか、という時に、
謝混の家に別の訪問者があった。
ふたりは羊孚のことを
よく知らなかったため、
「謝混どのの家にいた不届き者」
くらいの目で羊孚を見たようである。
もう露骨に邪険にした。
とっとと謝混どのの家から出て行け、
それくらいの勢いである。
が、羊孚、まるで気にも留めない。
それどころかテーブルに足を投げ出し、
二人のことをシカトし、謝混と語る。
ホストたる謝混も、王熙らには
それなりの挨拶だけを交し、
あとはずっと羊孚と会話していた。
その会話の内容を聞き、王熙たち、
はじめて羊孚が
どれだけ優れた人物なのかに気付く。
が、後の祭り。
やがて朝食が運ばれてきた。
謝混、王熙らにはろくに
食事を勧めようともしない。
羊孚、羊孚、とにかく羊孚だ。
そうしてたくさんのごちそうに
ありついた羊孚、食事が終わると、
辞去を申し出た。
えっ! 羊孚さん、
我々とも話してくださいよ!
王熙らは懸命に引き留めたが、
いやだよ、と羊孚に突っぱねられる。
「先頃貴方がたに去れ、と言われたよな。
空腹だったから去らなかったのだよ。
いま、腹は満たされた。
ならば、ここに留まる理由もない」
羊綏第二子孚,少有俊才,與謝益壽相好,嘗蚤往謝許,未食。俄而王齊、王睹來。既先不相識,王向席有不說色,欲使羊去。羊了不眄,唯腳委几上,詠矚自若。謝與王敘寒溫數語畢,還與羊談賞,王方悟其奇,乃合共語。須臾食下,二王都不得餐,唯屬羊不暇。羊不大應對之,而盛進食,食畢便退。遂苦相留,羊義不住,直云:「向者不得從命,中國尚虛。」二王是孝伯兩弟。
羊綏が第二子の孚、少くして俊才を有し、謝益壽と相い好み、嘗て蚤きに謝が許に往かば、未だ食さず。俄に王齊、王睹が來たる。既にも先には相い識らねど、王は席に向かいて說びたる色有らず、羊をして去らしめんと欲す。羊は了にも眄りみず、唯だ腳を几上に委ね、詠矚せること自若たり。謝と王とは寒溫を敘せること數語にして畢え、還りて羊と談賞せば、王は方に其の奇なるを悟り、乃ち合共して語る。須臾にして食の下りたれば、二王は都べて餐ぜるを得ず、唯だ羊に屬し暇せず。羊は大いに應に之に對えず、盛んに食を進め、食の畢わるや便ち退る。遂にして苦だ相い留めど、羊が義にては住かず、直だ云えらく:「向きたる者は命に從いたるを得ず、中國は尚お虛たり」と。二王は是れ孝伯が兩弟なり。
(雅量42)
王熙、王爽。当世いちの風流人たちの弟は小者でした、とさ。
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