王恭8  王恭と王忱2  

王恭おうきょうが父親の王蘊おううんと共に

会稽かいけいに赴いた時のことである。


この時同じ太原たいげん王氏の王忱おうしんが、

墓参りにやってきていた。

それを聞いた王恭、墓のところに出向く。


元々仲の良い二人である。

そのまま話し込むこと十日余り。


その様は二匹のセミが連れ合って

鳴いているかの如くであったという。


ようやく帰ってきた王恭に、王蘊が問う。


「ずいぶんな長話ではないか。

 どうしてそうも時間がかかったのだ」


「王忱の奴との話題が

 いつまでも尽きなかったのです」


王蘊、それを聞いてため息をつく。


「お前、王忱殿が何をしに会稽に

 出向いていたのかを理解しているのか?

 墓参り、泉下の父祖への孝行だ。


 それをないがしろにして、

 お前といつまでもダラダラと

 しゃべくり続けるとは。


 親への孝をなおざりにする者が、さて、

 友への信にどこまで

 重きを置いたものかな。


 本当に王忱どのは、お前の友なのか?」


後日権謀渦巻く東晋宮中で、

王恭と王忱は仲違いにするに至った。


まさしく王蘊の言うとおりになった、

と言うべきであろう。




王恭隨父在會稽,王大自都來拜墓。恭暫往墓下看之,二人素善,遂十餘日方還。父問恭:「何故多日?」對曰:「與阿大語,蟬連不得歸。」因語之曰:「恐阿大非爾之友。」終乖愛好,果如其言。


王恭の父に隨いて會稽に在せるに、王大は都より來たりて墓を拜す。恭は暫し墓下に往きて之を看、二人は素より善きなれば、遂に十餘日にして方に還りなんとす。父は恭に問うらく:「何の故にて日の多きなるか?」と。對えて曰く:「阿大と語りたれば、蟬連し歸せるを得ず」と。因りて之に語りて曰く:「恐るらくは阿大は爾の友に非ず」と。終に愛好の乖れたらば、果して其の言が如し。


(識鑒26)




やめろ……俺の中の呉座ござ先生を起こさないでくれ……


「おまえ、因果関係、確定、できるはずねーだろっ!」

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