殷浩7 ハナワとハミ
その応酬の、凄まじいこと凄まじいこと。
間近に顔を突き合わせ、
ガンガンにやり合う。
側仕えが食事をもってきても気付かず、
冷めてしまったので再び温め直す、
が何度にも及ぶありさま。
どちらも羽の扇子を振り回すものだから、
羽がばっさばっさと食事の上に落ちる。
飯だか抜け殻だかわかったもんじゃない。
結局二人とも、日が暮れるまで
食事を忘れ、論を戦わせていた。
やがて殷浩さん、孫盛に言う。
「全く、よく噛みつく馬だ。
鼻の奥に穴をあけて繋いでやろうか」
すると孫盛も言う。
「は? 鼻に穴空けるのは牛だろうが。
お前の口にハミつけてやろうか?」
……どっちもガキかよ。
孫安國往殷中軍許共論,往反精苦,客主無閒。左右進食,冷而復煖者數四。彼我奮擲麈尾,悉脫落,滿餐飯中。賓主遂至暮忘食。殷乃語孫曰:「卿莫作強口馬,我當穿卿鼻。」孫曰:「卿不見決鼻牛,人當穿卿頰。」
孫安國は殷中軍の許に往きて共に論じ、往反の苦だ精なれば、客主に閒無し。左右は食を進むれど冷え、復た煖むるは四を數う。彼我は麈尾を奮い擲ち、悉く脫け落ち、餐飯が中に滿つ。賓主は遂に暮れに至りても食を忘る。殷は乃ち孫に語りて曰く:「卿は強口馬と作す莫れ、我れ當に卿が鼻を穿たんとす」と。孫は曰く:「卿は鼻を決せるが牛なるを見んか、人をして當に卿が頰を穿たしめんとす」と。
(文學31)
ハミ
馬を制御するために、馬にくわえさせる。くつわともいう。現行のものはだいたいくわえさせるだけみたいだが、「鼻輪のために穴を開ける」ようなことをするんなら、「ハミのために穴を開ける」ことも有り得たんじゃなかろうか。まぁ紀元前千年ごろからもうくわえさせるだけで済んだようだから、わざわざ穴をあける必要はなかったんじゃないか、と言う感じもある。けど、人間にハミをくわえさせるには頬に穴空けないと無理だよね。奴隷とかにはやってそうだよなあ。
南史だと「鼻ひねってやろうか」「首ひねってやろうか」で、まだわかりやすいんだよなあ。
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