司馬倫3 帖騎騎射    

羊忱ようしんと言う人は非常に貞節ある人だった。


かれが司馬越しばえつの副官として勤めていた頃、

司馬倫しばりんが、例のクーデターを起こした。


晋の中枢を一手に握って

好き放題やった賈南風かなんぷうを倒し、

それ以上に好き放題し始めたのである。


しかも、そんな司馬倫から

「羊忱をうちの部下にしたい」

と打診が来ちゃったもんだから、

さあ大変。


あんなのの部下になったら

ぜってーひどい目に遭う。

羊忱、司馬倫からの使者が

来たことを知ったそばから

鞍もついていない馬に乗り、逃げ出した。


使者にしてみれば、わけがわからない。

羊忱を追う。


すると弓の扱いに長けていた羊忱、

馬に乗りながら、

使者に当てないように威嚇射撃。


うっかり当たる事を恐れた使者、

それ以上は羊忱を追えずにいた。


こうして羊忱は

司馬倫配下になることから免れた。


なお司馬倫は、

その後皇帝を自称したもんだから

総スカンを食らい、殺されている。




羊忱性甚貞烈。趙王倫為相國,忱為太傅長史,乃版以參相國軍事。使者卒至,忱深懼豫禍,不暇被馬,於是帖騎而避。使者追之,忱善射,矢左右發,使者不敢進,遂得免。


羊忱が性は甚だ貞烈たり。趙王倫の相國と為れるに、忱は太傅長史為れば、乃ち以て相國軍事に參ぜんと版さる。使者の卒ち至れるに、忱は深く豫禍を懼れ、暇せず馬に被り、是に於いて帖騎に避る。使者は之を追えど、忱は射を善くし、矢を左右に發たば、使者は敢えて進まず、遂には免るを得る。


(方正19)




羊忱

八王の乱からは逃れられたが、のちの永嘉えいかの乱のときに殺されてる。どこで殺されるのがまだマシだったのか、と言う感じではある。ところで「帖騎」とは鞍も鐙もついていない馬に乗ることであり、かつこの状態で騎射するなど、並の漢人にできる芸当ではない。完全な騎馬民族ムーヴである。泰山羊氏やべえ。


司馬越

八王の乱の最終勝者。結果から言えば勝者側から敗者側にスカウトされたわけである。何の地獄かな?

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