謝安64 王献之のプライド

王献之おうけんし謝安しゃあんさまの元を訪問する。


するとそこには習鑿齒しゅうさくしが先に来ており、

長椅子に腰掛けていた。


状況としては王献之も同じ長椅子に

腰掛けねばならないのだが、

王献之、躊躇して座ろうとしない。


仕方ないので謝安さま、

もう一つ長椅子を持ってこさせ、

二人を向かい合わせて

座らせることにした。


さて、二人が帰った後、

謝安さまは甥の謝朗しゃろうに漏らす。


「王献之殿は

 実に清らかな人柄ではあるが、

 あのプライドの高さが、どうにもな。


 そのせいでのびやかな振る舞いが

 取れずにおるのが惜しくてならん」




王令詣謝公,值習鑿齒已在坐,當與併榻。王徙倚不坐,公引之與對榻。去後,語胡兒曰:「子敬實自清立,但人為爾多矜咳,殊足損其自然。」


王令は謝公を詣で、習鑿齒の已に坐に在せるに值い、當に榻を併さんとす。王は徙倚して坐さず、公は之を引きて榻を對わせしむ。去りたる後、胡兒に語りて曰く:「子敬は實に自ら清立、但だ人為は爾れ矜咳せる多し、殊に其の自然なるを損ずるに足る」と。


(忿狷6)




謝朗「それ劉惔りゅうたんさんにも言えよアンタ」

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