謝安60 夫人、孫綽を斬る

孫綽そんしゃくら兄弟が謝安しゃあんさまの邸宅に

宿泊した時のことである。


あの謝安さまのご自宅である。

緊張してしかるべきところ、

彼らは実にフランクに過ごしていた。


その様子を謝安さまの夫人、りゅう氏が

物陰からじっと聞いていた。


孫綽らが帰るのを見送った後、

謝安さま、劉氏に質問する。


「昨晩の客は、

 お前にはどう映ったかね?」


劉氏は答える。


「我が兄、劉惔りゅうたんの屋敷では、

 ついぞ見かけたことのない類の

 人種でございましたわね」


謝安さま、たちまち言外の

「あんな下品な奴ら」を読み取り、

縮こまりあがるのだった。




孫長樂兄弟就謝公宿,言至款雜。劉夫人在壁後聽之,具聞其語。謝公明日還,問:「昨客何似?」劉對曰:「亡兄門,未有如此賓客!」謝深有愧色。


孫長樂の兄弟は謝公が宿に就き、言は款雜に至る。劉夫人は壁の後にて之を聽き、具さに其の語を聞く。謝公は明くる日に還ぜるに、問うらく:「昨の客は何に似たらんか?」と。劉は對えて曰く:「亡き兄が門には、未だ此くの如き賓客は有らざるなり!」と。謝に深く愧づる色有り。


(輕詆17)




劉氏と謝道韞しゃどううんってめっちゃ仲良かっただろうなあ。「いかにほめやそされる士大夫であったとて、才覚なくばゴミクソですわ」とかどっちも切り捨ててきそう。マジで怖い。


つーかこのアネゴ、兄貴のこと大好きすぎだろ。

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