謝安56 出仕ヤダ    

謝安しゃあんさまが東山で隠棲し、

平服姿で日々を過ごしていた頃、

謝奕しゃえき謝拠しゃきょ謝万しゃまん謝石しゃせきと言った

謝安さまの兄弟たちは、

みな立身出世を遂げていた。


それこそ、彼らがひとたび動けば、

人も物も動かせぬものはない、

と言う位だ。


そんな中でひとり安穏としている

謝安さまに、妻のりゅう氏が言う。


「立派な男児たる者、

 彼らのようであるべきでは

 ございませんでしょうか?」


すると謝安さまは

鼻を触りながら答えた。


「御免被りたいところだが、

 まぁ、逃れられはすまいな」




初,謝安在東山居,布衣,時兄弟已有富貴者,翕集家門,傾動人物。劉夫人戲謂安曰:「大丈夫不當如此乎?」謝乃捉鼻曰:「但恐不免耳!」


初、謝安の東山に居して布衣に在れるに、時に兄弟は已に富貴たる者有れば、家門翕集せば、人と物とをして傾動せしむ。劉夫人は戲れに安に謂いて曰く:「大丈夫たるは、當に此くの如きならんか?」と。謝は乃ち鼻を捉えて曰く:「但だ恐るらくは、免れざりしのみ!」と。


(排調27)




謝安の兄弟は奕、拠、万、石、鉄といるのですが、このうち謝鉄さんはマジで影も形もありません。謝拠もだいぶ影が薄くてどうよって思ったんだけど、それ以上に薄い。まぁ謝石の影が濃いかって言ったらそうでもないんですけどね。


劉氏がここで「戯れに」って言っている所を見ると、実は謝安の隠棲の方向性に理解は示してたんじゃないかしらって方向で妄想もしてみたくなる。劉惔の妹なわけだし、桓温と直に会ったことも、もしかしたらあったかもしれないんだものね。

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