謝安55 うっかり☆謝万3

謝万しゃまん寿春じゅしゅん敗戦に絡む話だ。


晋軍の総大将として北征した謝万。

「俺はすごい」ばっかりで、

部下たちを全然慰撫しない。


謝安しゃあんさま、その才覚については

認めていたものの、

謝万のこの様子を見て、

このままでは間違いなく惨敗する、

そう危惧したため、従軍していた。


意気軒昂の謝万に、謝安さまは言う。


「お前は今や晋軍の総帥なのだ。

 よく配下たちを慰撫して

 おいた方がいいぞ」


めんどくせえなあ、

けどまぁ従っとくよ兄ちゃん。

そんなノリで、謝万は諸将を招集。


まーたなんか

めんどくせえことでもしようってのかよ、

げんなりしながら集まる諸将に対し、

謝万は彼らを如意で指しながら、言う。


「お前らは最強の兵士だ!」


あっ。


諸将、ガン切れになる。

単純に言えば、軍人のグレードは

将→曹→卒と言う感じだ。

仮にも「将軍」らを集めた場で、

彼らを「兵」呼ばわりする。


どんだけ彼らをバカにしたのか、

気付いてない、気付いてないですよ。

この貴公子。


話を聞いた謝安さま、

ひい、と悲鳴を上げ、

慌てて方々に謝罪して回った。

ひとりひとりに対し、それはそれは

とても丁重なものだったという。


で、ご存じの通り、謝万は大敗。


将軍たちは謝万を

殺してしまおうとも思ったのだが、

ある将が言う。


「東山の隠者殿に免じて、

 殺す、まではすまいよ」


諸将、それに同意。

だから謝万は追放で済んだ。


追放で済んだんですよ?




謝萬北征,常以嘯詠自高,未嘗撫慰眾士。謝公甚器愛萬,而審其必敗,乃俱行。從容謂萬曰:「汝為元帥,宜數喚諸將宴會,以說眾心。」萬從之。因召集諸將,都無所說,直以如意指四坐云:「諸君皆是勁卒。」諸將甚忿恨之。謝公欲深箸恩信,自隊主將帥以下,無不身造,厚相遜謝。及萬事敗,軍中因欲除之。復云:「當為隱士。」故幸而得免。


謝萬の北征せるに、常に嘯詠を以て自らをして高らしめ、未だ嘗て眾士を撫慰せず。謝公は甚だ萬の器を愛せど、其の必ずや敗るべくを審い、乃ち俱に行く。從容と萬に曰く:「汝は元帥と為り、宜しく數しば諸將を宴會に喚び、以て眾心を說ばすべし」と。萬は之に從う。因りて召集せらる諸將、都べて說びたる所無し。直ちに如意を以て四坐を指して云えらく:「諸君は皆な是れ勁き卒なり」と。諸將は甚だ忿り之を恨む。謝公は深く恩信を箸かんと欲し、自ら隊主や將帥以下に身を造らざる無く、厚く相い遜謝す。萬の事に敗るるに及び、軍中は因りて之を除かんと欲す。復た云えらく:「當に隱士を為るべし」と。故にして幸いにも免ぜるを得る。


(簡傲14)




似たパターンで実際に殺されてるのが謝安さまの嫡男(=謝琰。孫恩の乱を平定するに当たって部下をぞんざいに扱ったため部下に殺された)だってのが爆笑ポイントですね。

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