謝安33 謝安さま評価さる

謝安しゃあんさま、他の人からの

称賛コメントも寄せられてる。


今度はその辺りを紹介していこう。



王羲之おうぎし許詢きょじゅんにこのように話している。

「あなたはご自身を謝安殿と較べて

 どのようだとお考えでしょうか?」

この質問に、許詢は答えない。

なので王羲之、言葉を継ぐ。

「意地悪な聞き方であったな。

 なに、もとよりあの者は

 あなたに肩を並べるべき人物である。

 もっとも、こんなことを聞いたら、

 謝万しゃまんは目を吊り上げて

 張り合おうとするであろうがな」


突然引きこもりの兄に比較されて、

しかも兄貴に全然及ばないって

評価される謝万くん可哀想です……。



王献之おうけんしは謝安さまに言っている。

「謝安さまは聡明瀟洒でいらっしゃる」

謝安さまは答える。

「まさかまさか、そのような。

 だが、他ならぬあなたの評である。

 喜ばずになどおれようか」



孫統そんとうはこう語っている。

「謝安殿は、謝奕しゃえき殿よりも清らかであり、

 陳逵ちんき殿よりも芳醇である」



ある人が支遁しとんに聞いた。

王胡之おうこし殿は

 謝安殿、謝万殿と較べていかがですか?」

支遁は答えた。

「いうまでもなく、

 謝安を下から仰ぎ見てよじ登り、

 謝万には上から手を差し伸べてやる、

 となるだろうね」




王右軍問許玄度:「卿自言何如安石?」許未答,王因曰:「安石故相為雄,阿萬當裂眼爭邪?」

王右軍は許玄度に問うらく:「卿は自ら言えるに安石とで何如?」と。許は未だ答えず、王は因りて曰く:「安石は故より相い雄と為すべし、阿萬は當に眼を裂き爭わんや?」と。

(品藻55)


王子敬語謝公:「公故蕭灑。」謝曰:「身不蕭灑。君道身最得,身正自調暢。」

王子敬は謝公に語るらく:「公は故より蕭灑なり」と。謝は曰く:「身は蕭灑ならず。君が身を道いたるは最も得たり。身は正にして自ら調暢す」と。

(賞譽148)


孫承公云:「謝公清於無奕,潤於林道。」

孫承公は云えらく:「謝公は無奕より清、林道より潤」と。

(品藻59)


或問林公:「司州何如二謝?」林公曰:「故當攀安提萬。」

或るもの林公に問うらく:「司州は二謝とでは何如?」と。林公は曰く:「故より當に安に攀り、萬を提ぐ」と。

(品藻60)




孫統

この時代のビッグネームの一人孫綽そんしゃくの弟。文人にして詩人とのことだが、今調べたら孫盛そんせいが更に弟と聞いて笑った。いやいや、孫綽孫盛ってこの時代で名前聞くことの多い文人ですけど、孫統さん、ここではじめてそのお名前見ましたよ。


陳逵

孫策1に出てきた人。このエピソードの感じからして、桓温かんおんさまの幕僚っぽいと推測したのです。

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