謝安32 謝安と王珣1  

謝安しゃあんさまが中書監ちゅうしょかんであった頃のこと。


王珣おうしゅんが、中書省ちゅうしょしょうで開催される会合に

参加することになった。


遅れて中書省に到着した王珣、

既に席はぎちぎち。

空いているところと言えば、

……よりによって、謝安さまのところ。


このころ謝安さまと王珣、

ほぼ絶交状態だったのだ。


とは言えお仕事である。

謝安さま、膝を曲げ、

王珣の為のスペースを確保した。

そして王珣も、そこに迷わず着座した。


その表情は、全く平静の通り。

おっマジで? 謝安さま、瞠目する。


そして会合が解散となり、帰宅。

謝安さま、奥方のりゅう氏に漏らした。


「王珣を目の当たりとしてきたが、

 やはりそうは得難い人物だな。


 いくら絶交状態の間柄と言っても、

 それはそれとして、奴にはやはり

 惚れ惚れとせざるを得んよ」




謝公領中書監,王東亭有事應同上省,王後至,坐促,王、謝雖不通,太傅猶斂膝容之。王神意閑暢,謝公傾目。還謂劉夫人曰:「向見阿瓜,故自未易有。雖不相關,正是使人不能已已。」


謝公は中書監を領さる。王東亭は事有りて應じて省に上るを同じうす。王は後に至り、坐して促せるに、王と謝とは通ぜざると雖も、太傅は猶お膝を斂め之を容れる。王の神意の閑暢たれば、謝公は目を傾く。還りて劉夫人に謂いて曰く:「向かいて阿瓜を見たるに、故より自ら未だ有すは易からず。相い關せざると雖も、正に是れ人をして已已せしむる能わざるなり」と。


(賞譽147)




王珣と謝安の関係は、どうにもツンデレに見えて仕方ないのですよね、それも極上の……うふふ……。

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