桓温62 孟叔達を希う
あの、
ここでの敗戦の咎を受け、
桓温さまの配下武将であった
後日鄧迦は、
歴代皇帝の陵墓への参拝に赴いた。
その道すがら、桓温さまの元に立ち寄る。
初めて免職後の鄧迦と会った桓温さま、
その様相の変化に驚く。
「鄧迦、どうしてそうも
痩せさらばえてしまったのだ?」
すると鄧迦は答える。
「前漢の人物、
恥ずかしく思えてならぬのです。
孟敏は、自らが担いでいた
陶製の鍋を落し、割ってしまったら、
もはや鍋としての用を為さないそれを
いくら惜しんでも仕方がない、
と一顧だにしなかったと言います。
しかるに、私はどうでしょう。
今でもなお、枋頭で失った武名、
士卒らの命、我が矜持を振り返り、
恨みや無念が募って止まぬのです」
ちなみに鄧迦、桓温さまとの面会後、
程なくして、失意の元に死亡した。
鄧竟陵免官。後赴山陵、過見大司馬桓公。公問之曰:「卿何以更瘦?」鄧曰:「有愧於叔達、不能不恨於破甑。」
鄧竟陵は官を免ぜられたる後に山陵に赴き、過りて大司馬の桓公に見ゆ。公は之に問うて曰く「卿は何をか以て更に瘦じたるか?」と。鄧は曰く「叔達に愧づる有り。破れたる甑を恨まざる能わじ」と。
(黜免6)
鄧迦
桓温さま配下の武将として赫々たる大功を挙げている。というか劉孝標の挙げている参考文献「大司馬寮属名」とか言うのめっちゃ欲しいんですけど。よこせ。マジでくれ。
この条は、何となしに鄧迦さんへの同情の念が感じられる気がするんですよね。晋書では桓温さまによって厳しく罰せられたそうなんですが。あるいは厳しく罰したとはいえ、配下へなりの愛情は抱えたままでいた、とかなのかな。世説新語の桓温さまは、それでも義理人情に深い感じがあります。
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