桓温44 袁伏      

桓温かんおんさま、府の宿直を要請。

この要請に応じ、

袁宏えんこう伏滔ふくとうがやってきた。


だが点呼が取られると、

袁の姓の人間がもう一人いた。


え、もしかして俺お呼びじゃなかった?

袁宏はこのことを

伝令に調べさせようとした。


すると伝令、ははっと答える。


「いやいや、この府内で

 袁参軍と呼ばれるのは、

 袁伏、と並び讃えられている

 あなた以外おりませんでしょう。

 もっとどっしりお構えなさいよ」



ちなみに伏滔だが、後に孝武帝より

大いなる寵遇を受けている。


孝武帝が西堂で集会を開いた時、

伏滔にも席を設けていた。

百人以上の人が集まるような

席であったという。


そして孝武帝、玉座につくや否や、

他のことを捨て起き、

真っ先に聞いたそうなのだ。


「伏滔はいずこにおる?

 ここにおらんのか?」


このリアクションに伏滔、

帰宅してから自慢げに息子の

伏系ふくけいに語っている。


「帝よりの寵遇をこうまで

 得られることなど、

 そうめったにない事なのだぞ。


 どうだ、このような人物が

 お前の父なのだぞ」


……うっ、伏滔さん、さすがにそりゃ

佞臣ムーヴじゃないですかね……。




桓宣武嘗請參佐入宿。袁宏、伏滔、相次而至蒞名府中、復有袁參軍。彥伯疑焉。令傳教更質。傳教曰:「參軍、是袁伏之袁。復何所疑?」

桓宣武は嘗て參佐に入宿せるを請う。袁宏と伏滔とが相い次す。府中に至りて蒞名せるに、復た袁參軍有り。彥伯は疑う。傳教をして更に質さしむ。傳教は曰く「參軍は、是れ袁伏の袁たり。復た何をか疑う所ならんか?」と。

(寵禮2)


孝武在西堂會,伏滔預坐。還,下車呼其兒,語之曰:「百人高會,臨坐未得他語,先問『伏滔何在?在此不?』此故未易得。為人作父如此,何如?」

孝武が西堂の會に在りて、伏滔は坐を預く。還ざば下車し其の兒を呼びて、之に語りて曰く:「百人が高會せるに、坐に臨みても未だ他語を得ざるに、先に問うらく『伏滔は何こに在りや? 此こに在りや不や?』と。此れ故より未だ易くは得ず。人が為りの父を作せるに此くの如きは、何如?」と。

(寵禮5)




まぁ袁宏さん、重んじられてるとは言ってもちょくちょく桓温さまにぼてこかされてるしね……疑うよね……



伏滔

文人として、長い間東晋宮中で名を馳せている。桓温に従って功績を上げた、などと書かれているが基本的にはド文人である。まぁ、でなきゃ袁宏さんと並び讃えられるはずもないですね。

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