桓温13 偏屈能吏    

桓温かんおんさまの部下に、劉簡りゅうかんと言う人がいた。


桓温さまに取り立てられ、

のちに幹部ともなるわけだから、

当然めっちゃ有能である。


だが、とにかく剛直。

周りから煙たがられるレベルであった。


さてある時、そんな劉簡さんに

桓温さまが意見を問う。

が、劉簡さん、

まったく口を開こうとしない。


「なんでだんまりなんだよお前」


桓温さんが聞くと、答える。


「だってどうせ

 採用されないじゃないですか」


「まぁな」


 えっそこ否定しないの……




劉簡作桓宣武別駕、後為東曹參軍、頗以剛直、見疏。嘗聽訊簡、都無言。宣武問劉:「東曹、何以不下意?」答曰:「會不能用。」宣武亦無怪色。


劉簡は桓宣武が別駕と作り、後に東曹參軍と為るも、頗る剛直なるを以て疏まるを見る。嘗て聽訊せらるも、簡は都べて言無し。宣武は問うらく「劉東曹は何をか以て意を下さざるや?」と。答えて曰く「用いらる能わざるに會さばなり」と。宣武も亦た怪色無し。


(方正50)




劉簡

世説新語注にもめっちゃ有能としか載らない。っつーかこんなおいしい人がここにしか出て来ないのは勿体ない。いろんなとこにこっそり忍ばせたいくらいアクが強くて素敵である。


しかし謝安しゃあんが亡き司馬昱しばいくさまに送った諡号しごう簡文かんぶん」を眺めると、「あれっ謝安、もしかして劉簡のこと相当嫌いだったんじゃね……?」と思えて仕方ない。そんなこたあるはずもないが、まぁ、ネタとしてはおいしい。

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