桓温4  画聖、江陵を望む

桓温かんおんさま、江陵こうりょうの城を再建した。

こうしてできた建物は、凄まじく壮麗。


落成記念に賓客を招待、

長江のほとりから江陵城を望ませる。


「どなたか、我が江陵城を

 形容してみんかね?

 上手く形容出来た方には

 賞品を差し上げよう」


その場に居合わせた、

晋代随一の画家、顧愷之こがいし

江陵城を眺め、言う。


「ここより望む江陵城の多層の楼は、

 みごとに朱に輝いております。

 まるで仙界の建物のようです」


桓温さま、顧愷之のコメントに、

美女二人をプレゼントした。




桓征西治江陵城甚麗。會賓僚、出江津望之云:「若能目此城者、有賞。」顧長康時為客在坐、目曰:「遙望層城、丹樓如霞。」桓即賞以二婢。


桓征西は江陵城を甚だ麗しく治む。賓僚を會し、江津より出でて之を望みて云えらく「若し能く此の城を目せる者有らば、賞せん」と。顧長康は時にして客と為りて坐に在り、目して曰く「遙かに層城を望まば、丹樓は霞の如し」と。桓は即ち二婢を以て賞す。


(言語85)




顧愷之

この時代の画家としては、真っ先に名が挙がる人である。それだけじゃなくて文にも長け、ついでに言うとすっげえすっとぼけた人柄でもあったという。まぁどう考えても清談大好きなお貴族さまに取っちゃもてはやされる人だわな、って感じではある。

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