桓温3  礼記の講義   

桓温かんおんさま、劉惔りゅうたんと一緒に

礼記らいき』の講義を受けていた。


そのような折、こそっと劉惔に語る。


「こうして改めて礼記の言葉を聞くと、

 時々心がぴくっ、ぴくっと反応する。

 これが老子ろうしの見出した道の境地、

 というものかな」


すると劉惔は語る。


「この程度の言葉に

 いちいち感心しておるな。

 所詮この段階の言葉では、

 未だ儒の基礎レベルぞ」




劉尹與桓宣武共聽講禮記。桓云:「時有入心處、便覺咫尺玄門。」劉曰:「此未關至極。自是金華殿之語。」


劉尹と桓宣武は共に禮記を聽講す。桓は云えらく「時にして心に入れる處有り。便ち玄門に咫尺せんと覺ゆ」と。劉は曰く「此れ未だ至極に關せず。自ら是れ金華殿の語たり」と。


(言語64)




金華殿

前漢の時代、成帝が家臣に命じて儒の基礎講座を受講させていた場所。ようは礼記の講座の内容は儒、即ち現実世界の処世にのみ留まっており、世界の真理、その根本に迫る議論になど届いていない、という発言。さすが劉惔さん、現実 IS KUSO を躊躇なくブッ込んでこられる。

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