王導6  ハッタリ都市計画

桓温かんおん姑孰こじゅくに拠点を移す際、

市街を整備、まっすぐな道を張り巡らせた。


この様子を見たある人が、王珣おうしゅんに言う。


王導おうどうさまは建康けんこうに入植なさる際、

 いにしえのしきたりを守らず、敢えて

 曲がりくねった街路を設計なさいました。


 桓温様の設計は、それに比べると

 少々趣に欠けますな」


王珣は答える。


「全くです。この江南こうなんの地は、

 どうしても中原に較べると

 手狭にならざるを得ません。


 このような場所で

 直線的な道にしてしまえば、

 狭い町だ、という事が

 たちどころに明らかとなってしまう。


 そこを避けるために、敢えて

 王導さまも道を

 お曲げになりましたのに」




宣武移鎮南州,制街衢平直。人謂王東亭曰:「丞相初營建康,無所因承,而制置紆曲,方此為劣。」東亭曰:「此丞相乃所以為巧。江左地促,不如中國;若使阡陌條暢,則一覽而盡;故紆餘委曲,若不可測。」


宣武は南州に移りて鎮ず。街衢を平直に制せるに、人は王東亭に謂いて曰く「丞相の初に建康を營むに、因りて承く所無く、制し紆曲を置く。此に方べ劣りたらん」と。東亭は曰く「此れ丞相の乃ち以て巧みたる所なれば、江左は地の促りたれば、中國に如かず。若し阡陌をして條暢たらしまば、則ち一覽にして盡く。故に紆餘委曲とし、測るべからざるが若くす」と。


(言語102)




桓温の「うるせーバカ実用優先だ」って声が聞こえてきそうです。

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