孝武9  お魚食いたい  

孝武こうぶさまの側近の一人に、

虞嘯父ぐしょうふと言うひとがいた。


しかしこの人、側近になってから

まだ一度も孝武さまに

献策をしてきたことがない。


なので孝武さま、ちらっと聞いてみた。


「そろそろ、君からも何かを

 献じてもらいたいものだがな」


虞嘯父の実家は冨春ふしゅん、海のほど近く。

なので虞嘯父、海産物でも

献上して貰いたいのかな、と勘違いした。


「この暖かな時期では、

 まだ魚や蝦、貝も満足に獲れません。

 今しばらくお待ちいただければ、

 立派な海の幸を献上いたしましょう」


孝武さま、この勘違いに

爆笑ノンストップであった。




虞嘯父為孝武侍中。帝從容問曰:「卿在門下、初不聞有所獻替」。虞家富春近海、謂帝望其意氣。對曰:「天時尚煗、䱥魚蝦䱹未可致。尋當有所上獻。」帝撫掌大笑。


虞嘯父は孝武の侍中と為る。帝は從容と問うて曰く「卿は門下に在りてより初にも獻替せる所有れるを聞かず」と。虞は海の近き富春に家す。帝は其の意氣を望めるかと謂い、對えて曰く「天の時の尚お煗かなれば、䱥魚蝦䱹を未だ致さざるべし。尋いで當に上に獻ぜんとせる所を有すべきなり」と。帝は掌を撫きて大いに笑う。


(紕漏7)




虞嘯父

残ってる事跡が佞臣っぽい。しかしこのエピソードを残されちゃうのはしんどいですなぁ……。

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