簡文26 脇役簡文さま  

簡文かんぶんさまは帝の補佐として

相王しょうおう」と呼ばれた。

宰相にして会稽王かいけいおう、故に相王というわけだ。


簡文さまと謝安しゃあんとで、

桓温かんおんの家に訪ねたことがあった。


この時桓温の家には、

王珣おうしゅんが既に訪問していた。

相王たちがお見えになるのなら、と

辞去を申し出ようとした王珣。

しかしそれを、桓温が引き止める。


「王珣、きみはかねてより相王を

 ひと目見てみたい、と言っていたな。

 カーテンの裏から覗いてみるか?」


さあ、二人が桓温としばし話す。

そして、立ち去る。


「どうだったね、王珣」


「補佐役としての重役を

 お受けになったからでしょうか、

 非常にどっしりと

 なされておるように思われました。


 しかし桓温さま、私は改めて、

 貴方様に感服してしまいましたよ。

 あの謝安の堂々たる様子と来たら。


 あの謝安をして

 仕えたいと思わせる貴方様は、

 やはり万人が仰ぎ見るお方です」




簡文作相王、時與謝公共詣桓宣武。王珣先在內。桓語王:「卿嘗欲見相王。可住帳裏。」二客既去、桓謂王曰:「定何如?」王曰:「相王作輔、自湛若神君。公亦萬夫之望、不然僕射何得自沒?」


簡文の相王と作せる時、謝公と共に桓宣武を詣でる。王珣は先にして內に在り。桓は王に語るらく「卿は嘗て相王を見んと欲す。帳裏に住たるべし」と。二客の既にして去らば、桓は王に謂うて曰く「定めし何如?」と。王は曰く「相王の輔さるを作せるに、自ら湛として神君が若し。公も亦た萬夫の望なり。然ずんば、何をか僕射の自ら沒せるを得んや?」と。


(容止34)




王珣さんちょっと桓温さまに心酔しすぎ問題。

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