簡文19 ナイトタイムラヴ
ある夜のこと。
風はそよよか、月あかりは清明。
小さな部屋の中で、
二人は思うさまに語らい合う。
その中で許詢は、胸中の思いを歌に託す。
元々それは許詢の得意技ではあったが、
この日の詩藻は、際立って冴えていた。
簡文さま、許詢とは
常日ごろ親しくしている訳であるが、
この日の許詢の言葉には、
はなはだ感嘆を禁じ得ない。
ずずいと近付き、許詢と膝を接し合う。
お互いの手と手を重ね、
夜が明けるまで語らい合った。
後日、簡文さまは述懐している。
「許詢どのほどの才覚と情念とは、
いやはや、そうそうは
出会えないことであろうよ」
さて、別の日のことだ。
これを聞いた
「
近づけたらえらいことになるぞ」
許掾嘗詣簡文。爾夜、風恬月朗、乃共作曲室中語。襟情之詠、偏是許之所長、辭寄清婉有逾平日。簡文雖契素、此遇尤相咨嗟、不覺造厀共叉手語達于將旦。既而曰:「玄度才情、故未易多有許。」
許掾は嘗て簡文に詣づ。爾の夜、風は恬にして月は朗らかなれば、乃ち共に曲室中の語を作す。襟情の詠は偏えに是れ許の長ぜる所なれど、辭を寄するに清婉なること平日に逾ゆる有り。簡文は契素ありと雖も、此の遇にては尤も相い咨嗟し、覺えず厀に造り、共に叉手し、將に旦にならんと達せるまで語る。既にして曰く「玄度が才情は、故より未だ多くは有り易きを許さず」と。
(賞譽144)
王中郎舉許玄度為吏部郎。郗重熙曰:「相王好事。不可使阿訥在坐頭。」
王中郎は許玄度を舉げて吏部郎と為す。郗重熙は曰く「相王は事を好む。阿訥をして坐頭に在らしむるべからず」と。
(輕詆31)
王坦之
郗曇
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