簡文12 とても つらい2

司馬昱しばいくさまが会稽かいけい王であった頃、

司馬昱さまのサロンに、

二人の講師が招かれた。

支遁しとんと、許詢きょじゅんである。


支遁は時の清談サロンにおける旗手。

清談に仏教的理論を織り交ぜた語りが得意。


許詢については、簡文さまより

「この人の書く詩は超やばい」

と大絶賛を受けている人物である。



さあ、支遁が命題をぶち上げる。


 参加者「うおおォオオオン!」


すると、許詢が鋭く反駁する。


 参加者「うおおォオオオン!」


なお参加者は

誰も議論の詳細を理解していないもよう。




支道林、許掾諸人、共在會稽王齋頭。支為法師、許為都講。支通一義、四坐莫不厭心。許送一難、眾人莫不抃舞。但共嗟詠二家之美、不辯其理之所在。

支道林や許掾ら諸人は、共に會稽王の齋頭に在り。支は法師と為り、許は都講と為る。支の一なる義を通ぜるに、四坐に厭心せざる莫し。許の一なる難を送ぜるに、眾人に抃舞せざる莫し。但だ共に二家の美を嗟詠せるのみにして、其の理の所在は辯ぜず。

(文學40)


簡文稱許掾云:「玄度五言詩、可謂妙絕時人。」

簡文は許掾を稱えて云えらく「玄度が五言詩は妙なるなること時の人を絕せると謂えるべし」と。

(文學85)




支遁

格議かくぎ仏教の第一人者、とのことである。これを言い換えると仏典を清談流に解釈したもの、という事で、……ぁあ^~そりゃお貴族さまの大好物じゃないですかどう考えても。つーかこのエピソードも衆愚の衆愚っぷりが描かれててつらい。


許詢

当代一流の文人の一人。この人まわりで謝安しゃあんとか孫綽そんしゃくとかの名前も散見される。謝安については言わずもがなだけど、許詢も孫綽も、やっぱり登場エピソード数が結構多かった。と言ってもこの辺の人間が出てくるのってほぼほぼ清談とんち合戦だろうしなぁ。俺「うおおォオオオン!」って言うだけ言って没にしまくりそうだわ。

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