廃帝4  廃位の理由は  

桓温かんおんさま、廃帝廃位ののちは、

なかなか簡文かんぶんさまと

うまく話すことができなくなっていた。


とは言っても、

なぜ廃帝を廃せねばならなかったか、

は伝えねばならない。


そこであらかじめ話すべきことを決め、

謁見の間に向かう。


のだが、桓温の顔を見るなり簡文帝、

もう涙が滂沱である。


もう桓温さま、アウアウアーになった。




桓宣武對簡文帝、不甚得語。廢海西後、宜自申敘、乃豫撰數百語、陳廢立之意。既見簡文、簡文便泣下數十行。宣武矜愧、不得一言。


桓宣武は簡文帝と對せるに、甚だ語を得ず。海西を廢せるの後、宜しく自ら申敘すべかるに、乃ち豫め數百語を撰じ、廢立の意を陳べんとす。既に簡文に見ゆらば、簡文は便ち泣の下ること數十行なり。宣武は矜愧し、一言をも得ず。


(尤悔12)




簡文さまはしょっちゅう悲しんでおられますね。それにしてもこのエピソードの桓温さまがマジでふだんの剛毅さはどこへって感じでふしぎ。世説新語を読むと簡文桓温は「最も仲睦まじいカップル」のひとつにカウントできるくらいの間柄ではあるので、世説新語的には不思議でも何でもないけど、史実的にはきょとんとしてしまう感じがあります。


まぁ、簡文回りっておそらく晋書に「書かれなかった」ことが非常に多いはずなんですよね。成帝せいてい以来ずっと明帝めいてい系の皇帝を宰相として支えてきたお方なので、本来だったらもっといろんなエピソードが史書にあるはずなのです。そのほとんどがカットされて「清談の出来る司馬衷しばちゅう」扱いってのは、ほんに不自然。まぁ残ってない記録に対してあーのこーの言ってもどうしようもないですけど、とりあえず妄想ははかどります。

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