廃帝3  帝をしのぐもの 

桓温かんおんさま、遂に廃帝はいていを廃して

簡文かんぶんさまをお立てになった。


さて謝安しゃあん、桓温に会うと

いきなり拝礼した。

要は、天子向けの礼を桓温にしたのだ。


びっくりするのは桓温である。

けど、笑いながら言う。


「ちょま、お前なにやってんの」


謝安、顔も上げないままで言う。


「帝すら畏れ敬っているあなた様に向け、

 臣なんぞが平然と相対するなど、

 いやはや何とも、とてもとてもとても」




桓公既廢海西、立簡文。侍中謝公見桓公拜。桓驚笑曰:「安石、卿何事至爾?」謝曰:「未有君拜於前、臣立於後。」


桓公は既に海西を廢し簡文を立たしむ。侍中の謝公は桓公を見て拜す。桓は驚き笑いて曰く「安石、卿は何ぞの事にて爾れるに至りしか?」と。謝は曰く「君が前にて拜せるに、未だ臣の後に立つるはあらず」と。


(排調38)




「本当の皇帝はあなたでしょう?」

くらいのことを謝安は当てこすったわけですね。


桓温、イラッときたろうなぁw

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