廃帝1 廃帝廃位
廃帝 海西公
太微垣は天の星座のうち、
政府の運命を占う、とされる区画だ。
そして火星の動きは、概して凶兆。
元々資格不十分とされていた
遂に廃位がなされた。
だが火星、再び太微垣エリアに侵入する。
まー惑星ですしね。逆行しますよね。
ただ、皇室の未来を占う者たちにしちゃ
洒落にならない事態じゃある。
廃帝ののち皇位に就いた
当然気が気じゃなくなる。
宿直していた
「天命の長短など、
この身では測りようがない。
とは言え火星の動きからすれば、
我が身にも同じようなことが
起こってしまうのではないだろうか」
すると郗超、答える。
「
万全に固めておられます。
陛下に於かれましては、
ご憂慮をお懐きになりませぬよう。
臣ら百余名、陛下の為にも、
身を挺してお守り申し上げることを
お約束いたします」
これを聞き、簡文帝は凄愴な声で
「志士は朝の危うきを痛み、
忠臣は主の辱むらるるを哀しむ」
後日、郗超は暇を貰い、
実家に戻ろうとした。
すると簡文帝が言った。
「父君に伝えてくれ。
遂に、このような事態を招いてしまった。
それもこれも、朕が国防のために
万全の備えを為せなかったからである。
この嘆きの深さ、
どのように言葉にして言い表せようか」
涙がこぼれ、その袖を濡らした。
初、熒惑入太微。尋廢海西、簡文登阼。復入太微、帝惡之。時郗超為中書在直、引超。入曰:「天命脩短、故非所計。政當無復近日事不?」超曰:「大司馬方將外固封疆內、鎮社稷。必無若此之慮。臣為陛下、以百口保之。」帝因誦庾仲初詩曰:「志士痛朝危、忠臣哀主辱。」聲甚悽厲。郗受假還東、帝曰:「致意尊公。家國之事、遂至於此。由是身不能以道匡衛、思患預防。愧嘆之深、言何能喻。」因泣下流襟。
初、熒惑は太微に入る。尋いで海西は廢され簡文は阼に登る。復た太微に入らば、帝は之を惡む。時に郗超の中書為りて在直せるに、超を引く。入れるに曰く「天命の脩短、故より計る所に非ざれど、政に當に復た近日の事なかるべきや不や?」と。超は曰く「大司馬は方に將に外を固めて疆內を封じ、社稷を鎮む。必ずや此くの若き慮り無からん。臣は陛下が為に百口を以て之を保んず」と。帝は因りて庾仲初が詩を誦みて曰く「志士は朝の危うきを痛み、忠臣は主の辱まるを哀しむ」と。聲は甚だ悽厲たり。郗は假を受け東に還る。帝は曰く「意を尊公に致すべし。家國が事は遂にして此に至る。是れ身の道を以て匡衛し、患を思いて預め防ぐを能わざるに由る。愧嘆の深きは、言に何ぞ能く喻えんか」と。因りて泣下りて襟に流る。
(言語59)
桓温が簡文さまを帝位につけたのは、一般には「禅譲をさせるため」ということになっています。実際のところどうだったかはさておき、このエピソードはその物語の延長線上にある感じですね。
ちなみに宋書における天文現象の記述(天文志)をざっと二百年くらい漁ってみたんですが、天文現象って数年先の現象を占ったりしてます。で、この現象も本当に載っています。
そして簡文帝は即位後一年と経たずに死亡。つまり余裕で占いが実現した、と言えるレベルなわけですね。このエピソードは、そこからの逆引きという感じがします。なにせここに一緒にいる郗超って、桓温にとっての諸葛亮みたいな存在ですからね。廃帝廃位にも関わってるし、その後の禅譲の絵図も引いてたはずなんですよ。更に言えば、「父親を左遷に追い込んだりもしている」。
ここで簡文さまが郗超に「父上によろしく」って言うのは、つまり「わしもそなたの父上のような身の上になるのだろうな」ってことを言い表すことになります。ひりつきますねー、このやり取り。そしてその辺もうちょっと説明しようか世説新語さん? まぁいつものことですが。
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